フィードバック
最近では人事の分野でもひんぱんに使われるようになった「フィードバック」。もともとはエレクトロニクス分野の用語であった。
系(システム)の出力を入力へ戻す操作である。システムの振る舞いを説明する為の基本原理として、エレクトロニクスの分野で増幅器の特性の改善、発振・演算回路及び自動制御回路などに広く利用されているのみならず、制御システムのような機械分野や生物分野、経済分野などにも広く適用例がある。21世紀に入り、多種多様なサービスで不可欠になった情報システムも、フィードバック制御を前提として開発されている。
人事の分野では、おもに対象者の行動や言動などについて、観察者がその様子を伝え返すことを意味する。研修などで行うロールプレイでは、このフィードバックが重要とされ、自身を客観視することに大きな役割を果たすとされている。
先日クライアント企業の研修に事務局として参加させていただいた。その企業では今年から人事制度を整備して導入した。店主もお手伝いさせていただいたので、社員からの評判はとても気になるところである。
研修の参加者から出たコメントは、ズバリ「上司から評価結果のフィードバックがない」ということであった。ほとんどこの一点に集約されていたといってもいい。
評価の目的
評価制度の目的を考えると、この結果は制度が機能していないことを意味する。評価制度とは「人材育成」のために存在する。評価と似たような単語で「査定」というものがある。査定とは辞書を引くと「金額・等級・合否などを調査したうえで決定すること」とある。
中古車の査定をイメージするとわかりやすい。人事に置き換えると、勤務態度を査定して、賞与額や給与額などを決定すること、となる。
一方で「考課」という単語もよく使われる。人事考課などという単語を聞いたことがある読者も多いと思う。この考課とは「課題を考える」という意味だといわれることがある。評価を行うことで、被評価者の課題を考えて、次回の育成メニューを検討するのである。
人材育成を目的として評価を行うのであれば、評価期間中の仕事ぶりを振り返り、できたことはしっかりと褒め、できなかったことはなぜできなかったのか、できるようになるためには、どこに課題があるのかを上司部下で一緒に考える必要がある。
その際にはフィードバック、つまり「対象者の行動や言動などについて、観察者がその様子を伝え返す」ことが重要である。そうすることで部下は自身の職務行動を客観的に把握することができ、はじめてできていないことを自覚し、できるように行動しはじめるのである。
結果のフィードバックも同じく重要だ。一般的に評価者が決定した評語は、横並びで多面評価し甘辛調整や評価者ごとのバラツキを是正し、最終的に決定される。その結果を受け取った評価者は、その結果についてもきちんとフィードバックする必要がある。調整後の結果が会社が認めた職務行動についての可否判断なのだ。
このフィードバックがなされないと、本人の行動改善につながらず、育成にはならない。これまで出来なかったことが出来るようになることが成長であり、それを支援していくのが育成なのである。フィードバックなくして育成なし、なのだ。