Cafe HOUKOKU-DOH

~ホッとひと息的な読み物でブレイクするサイト~

IVYおじさんの創業日誌

労務相談

現在長期で「専属人事パートナー契約」を結んで継続的にお手伝いをさせていただいているクライアント企業は3社ある。どのクライアントさんからも社員の働き方や、日々起きるさまざまな課題への対応といった「労務相談」が寄せられる。

 

多いクライアント企業だと年間で約20件以上の相談をいただく。今週もそのクライアント企業からの相談で、有期雇用契約が話題となった。

 

労働契約には期限の定めのないいわゆる「無期雇用契約」と基本的に3年以内の期間を定めて契約を取り交わす「有期労働契約」の2種類がある。

 

なぜ有期契約の期間について、労働者の不利になりそうな上限を設け、それを3年としているかというと、戦後制定された労働基準法が、戦前に行われていた借金のかわりに子供を差し出させ、長期の労働契約をたてに劣悪な労働環境で働かせ、不当に労働者を拘束したといった不幸な事件を想定しているからだ。

 

 

この有期労働契約だが、20年くらい前までは、雇用契約を更新しない「雇止め」を行うことで、業務の繁閑に応じて労働力を調整する「雇用の調整弁」としてどこの企業も便利に使っていた。

 

店主の会社員時代でも、3ヶ月契約を15年以上も更新し続け、製造現場では誰より古参の存在で、どこの工程の作業もこなす、スーパー契約社員が何人もいたものであった。

 

ところが非正規社員と正規社員の格差が社会問題化しはじめ、非正規社員を正社員化するようにと政策の方向性がかわりはじめる。2008年に労働契約法が制定され、それまで判例のみにあった、雇止めの適法性が法律の条文に明文化された。

 


この法改正によって、有期雇用契約の社員を雇用の調整弁に使うことは事実上できなくなったのだ。

 

さらにその後、派遣社員の派遣期間の上限設定や、無期雇用契約への転換ルール、さらには同一労働同一賃金などといった法改正により、有期雇用契約派遣社員などは、臨時的な業務へのアサインを基本とした、有期限本来の契約にシフトしてきている。

 

しかしながら、わが国の多くの経営者や人事担当者は、有期雇用契約を取り巻くこの大きなパラダイムシフトに気がつかず、本質を理解していない。あいも変わらず有期雇用契約派遣労働者を安価で都合よく使える労働力としてしか見ていない。アタマの中がアップデートされていないのである。

 

www.soumu.go.jp

 

一方で労働力不足は確実にやってくる。20年後の労働力人口はすでに事実として見えているのである。将来に向けて持続可能な企業の成長を目指すのであれば、適正な人件費を負担して、生産性を向上させ、いかに創出する付加価値を高めていくのか、この点にフォーカスした経営を行う企業だけが生き残っていくことは間違いないであろう。