給与厚生課
2007年4月の組織人事で、店主は人事課長から給与厚生課長に異動となりました。前年度は人事課長として、組織や配置、任免、昇格、評価といった人事と、新卒、キャリア両方の採用、それと給与計算ならびにグローバル人事と、その後に3つの課で担当することになる範囲を課長としてみていました。
しかし、給与計算部隊の状況が思わしくないことから、立て直しに専念するようにと課として独立させ、担当することになりました。実質的には、勤務地も9ヶ月前から宮城の工場に移し、その他の業務は各係長以下、担当者に任せていたので名実ともに給与に専念することになりました。
本社に残してきた人事と採用のメンバーのことはやはり心配でしたし、せっかく戻った本社からまた宮城に戻ることになり、さびしい気持ちがないとはいえませんでしたが、とにかく品質不良が続発している状態をなんとかしなければなりません。
当時の給与厚生課の状態は、完全な負のスパイラルに入っていました。給与支給などにミスが発生する→問合せを受けて調べる→正しい金額を計算し直す→迷惑をかけた社員に謝罪、説明する→修正の処理を行う、といった定常業務以外の業務が増える→本来業務にあてる時間がなくなる→段取りができない→非効率な仕事の進め方でますます時間が掛かる→チェックにかける時間がなくなる→時間切れでチェックしきれないまま終了→ミスがまた発生する、ということの繰り返しでした。
また、この状態に嫌気が差して退職する正社員のメンバーも出てきて、その抜けたあなを派遣社員で急場しのぎしてきたことも、全体的な熟練度が大幅に低下していて、人数は変らないのですが、効率は半分以下という状態でした。
店主は、新卒で会社に入ってからおよそ8年間、給与計算の実務を担当してきていました。最初は川崎の工場のみ約5百名分でしたが、その後全社分を一括で計算するように仕組みを変え2千人分を担当し、合併後には4千5百人分を計算するよう統合作業まで行ってきました。
その経験から、給与計算でのミスをなくすポイントは、インプットするデータから計算後の理論値をはじき出し、計算結果とつき合わせ検証することと、毎月の定常業務における変化点を管理し、結果にどのような影響をおよぼすかを推測し、計算結果を検証することだという持論を編み出していました。
そのポイントをしっかりと実践していきたいのですが、メンバーの入れ替わりが激しく、計算を期日までなんとか間に合わせるのが精一杯といった状態で、とても持論を仕組み化する余裕はありませんでした。
負のスパイラルを断ち切るためにはどうすればいいのか。毎日深夜の国道を帰りながら、策が浮かばす悶々とした日々が続いていたのでした。
つづく…