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人事屋修行記(第109話)

人事部長交代

2年間の給与厚生課の建て直しに一応のメドをつけ、店主は2008年4月に新宿の本社へ転勤し、1年ぶりで人事課長に復帰しました。当時の人事課の分掌は、人事、人事企画そして採用業務を加えた広い範囲を課長以下6名でこなしていました。

 

リーマンショックが起きる直前ですので、好調な景気の波にのって業績もよく、採用業務は新卒、キャリアとも3桁もの人数の採用をしていて、業務量も多く、メンバーにも相当な負荷がかかっていました。

 

店主も給与への異動前の得意なフィールドに戻ってきたということもあり、メンバーの負荷も高かったので、プレイングマネージャーとして、業務のほとんどをプレイヤーとしての時間にあてていました。

 

デスクは本社にあるものの、宮城の工場、宇都宮の研究所と全国各地の採用面接会場を飛び回るといった感じで、本社に一週間顔を出さないということもめずらしくありませんでした。

 

 

このような状況の中で、忙しさにさらに拍車をかけたのが上司である人事部長の交代でした。前任の人事部長は、入社以来ずっと一緒に人事の仕事をしてきた6年先輩で、とても優秀な人でした。そんな人物に目をつけたのが2000年に親会社である完成車メーカーの経営企画部長から転籍してきた管理本部長でした。

 

経営者としてのキャリアを目指すなら、人事の領域だけでは足りない。金の領域も見れるように経験を積んでいくべき、といって、その上司を人事部長から事業管理部長にローテーションさせたのでした。

 

そんなに人材の層が厚い会社ではありませんので、人事部長の後任人事は消去法となり、労働組合出身の定年まで3年弱を残した人材開発課長が昇進し、就くことになりました。悪い人物ではないのですが、なにぶん労働組合の委員長を長く務め、数年前に復職してきたのですから、人事の本流の知識も経験もありません。

 

上司の経験や専門性が高くないと、部下としての提案に対し、するどい突っ込みはなく、かなり裁量を持って自由に仕事を任せてもらえる半面、慎重な性格の上司だと、案件の決裁をもらうのに、説明に時間と手間がかかってしまい、スピード感をもって仕事が進められません。

 

特に当時はただでさえ忙しい時期でしたので、これは結構なストレスになりました。それまでであれば、ひと言で済んだ話が、わざわざ時間をとって打合せを行い、その中で資料を示しながらていねいに説明をする、いままでが恵まれていたということだったのですが、それに気がつくにはずいぶんと時間がかかり、いま思い返すと、そんなあたらしい上司にずいぶんと失礼な態度をとっていたものでした。

 

上司ともいい関係を築いて、結果的に組織全体としてのパフォーマンスを上げていくのも部下の実力のひとつだということに考えがいらない、マネジメントより自分が得意なプレイヤーをやってしまっていた、まだまだ未熟な課長がそこにはいたのでした。

 

つづく…