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人事屋修行記(第105話)

社長交代

店主の当時の会社は、大手自動車メーカー系列の部品会社で、親会社の資本が4割ほど入っていました。基本的に人事制度などはまったく別であり、人の行き来も親会社からの転籍もしくはそれを前提とした出向などの一方通行のみで、人材面でのつながりはそれほど強くはありませんでした。しかし、資本関係があって連結決算の対象ですので、社長と開発担当、経理担当の役員は必ず派遣されていました。

 

社長で派遣されてくる人物は、だいたい親会社の取締役以上で、年令は50代半ばというパターンがほとんどでした。グループ全体で社長以下役員全員、基本的に満59才の総会で退任ですので、社長の任期は4、5年程度、50代前半で来る場合など、「今回は長期政権だな」などと社内で囁き合う感じでした。

 

我々人事部門として、社長が交代してまずやらなければいけないことは、会社経営を行う上で重要な人的資源管理に対し、しっかりとした判断をしてもらえるよう、人事制度ならびに人事面から見た課題をしっかりと説明し、理解をしてもらうことでした。

 

きちんとした判断をしていくためには、表面的なルールだけではなく、会社の歴史やビジネスの変遷、さまざまなことが決まってきた経緯まで含めて説明していく必要があります。

 

 

2007年は社長交代があり、店主は給与厚生課長だったにもかかわらず、今までの経緯から人事部長から引き続き頼むとお願いされ、部長と一緒に新社長への人事制度などのレクチャーを担当することになりました。6月下旬の総会が終わって、ひと段落した7月上旬に2時間ほど時間をもらい、レクチャーの準備です。

 

レクチャーの内容自体は、前回の資料があるので、それをアップデートしていけばいいので準備にそれほど時間は掛かりません。役員関連の規定、人事制度の概要、人事面での課題などを準備して当日のレクチャーにのぞみます。

 

問題なのは、レクチャーの当日です。毎回多かれ少なかれ、この仕組みはなぜこうなっているのか、それは、親会社の仕組みとなぜ違うのか、親会社と同じにした方がいいのではないか、という話になりました。

 

社長の立場からすると無理もない話しで、人事の専門家ではない方々ですので、その違いがどのような意味を持っているのかなど、理解できるはずもありません。

 

また、手抜きという訳ではないのですが、ルールが昔のままで見直しをしてこなかったような部分などについて、するどい指摘をもらって、見直しを迫られたこともありました。

 

 

結局、この年も役員の出張旅費について、イマドキ役位によって日当に金額に差をつけているのは、合理的な説明がつかないのでは?とのご意見をいただいき、早々に見直すこととなりました。

 

このようなイベントもアップデートが必要な部分を親会社視点で見てもらうという効果もありつつも、逆に10倍以上の規模の完成車メーカーと部品メーカーでは、異なった管理をしていかないと、コスト競争力をつけられないということを、なかなか理解してもらえず、苦労することも少なくありませんでした。

 

この経験は、部長になってから、役員会などで経営者を説得して理解をいただくという、人事部長には必須の仕事をこなしていく上で、とても貴重な経験となりました。

 

つづく…