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人事屋修行記(第117話)

上司

店主は2006年に課長になったわけですが、本社人事に行ってからずっと5つ年上の先輩と二人三脚で仕事をしてきました。その先輩には採用面接もしてもらい、入社後も工場の人事と本社の人事という関係で、ずっと目をかけてくれ、可愛がってもらっていました。

 

その先輩は、店主が課長になったときは人事部長として上司でいたのですが、翌年、役員へのサクセッションとしてヒトだけではなく、カネもといことで、事業管理部長に任用されました。当時、彼以外に人事部長の適任者はおらず、ショートリリーフとして元労働組合の委員長経験者が部長クラスの等級にいたので、その人が部長に昇進しました。

 

その方も2年後には定年退職され、さて、次の人事部長はということになったのですが、当然2年経っても適任者がいない状況には変りません。部長クラスを外部から採用するという発想がなかった会社ですので、社内でできそうな人物を探しました。そして、それ以降二代続けて情報システムの部長がスライドしてきたのでした。

 

前任の組合幹部出身の部長のときですら、単語(専門用語)が通じなくて非常にストレスを感じながら進めていたのですが、それがさらに加速しました。専門性といっても人事の仕事って一見外部からは結構評論しやすくて、みなさん持論を展開するのですが、それらの誤りを論理的に説明して、人事的に正しい判断を仰ぐのは結構骨が折れました。

 

 

一番たいへんなのは、労務などの就業規則やそれに付随する規定などの適用解釈で、やはり会社としては前例との論理的整合性なども踏まえて、判断をして対象者に説明する必要があるのですが、人事屋さんではない部長だと、そんなこと、いま一番いい内容に変えて行くべきでは、などと平気で発言する始末です。

 

そこを根気よく説明し、了解を取り付けていくことが続きました。以前の一緒にやってきた先輩のときなら、30秒で済んだ説明と了解の取り付けが、資料準備も含めて何時間にもおよぶことがしばしばでした。

 

また、先輩がいたときは彼が大きな方向性や方針を出して、仕事を指示してくれるので、自分で方向性を考える必要がなかったのですが、人事屋さんでない上司の場合、明確に方向性を出してくれません。ですので、そこから自分で考える必要が出てきました。

 

人事部の中に方向性などを考えてくれる人はもういないのですから、自分で考えるしかありません。そうなると人事のことだけでなく、会社全体のことや、ビジネスの状況などいろいろな情報が必要になってきます。このような情報は誰も教えてくれませんから、自然と自分から情報を取りに行くようになりました。

 

あとは、店主の判断が間違っていた場合、それをチェックしてくれたり、指摘してくれる人がいなくなっていました。間違った判断をすると、それがそのまま会社の判断になってしまうのです。上司への説明準備をするときに、熟考するクセが身に付いたのもこの時期でした。

 

いま考えると、上司のほうが専門性が高くないということは、人材育成という観点では経験を積むという意味でとても大きなチャンスであり、先輩の役員へのサクセッションは店主にとっても大きな意味を持つものだったような気がします。

 

つづく…