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人事屋修行記(第107話)

民事裁判

店主が2007年に給与厚生課の課長になったとき、大きな問題を抱えていました。前任の課長が規定の解釈を間違い、定年退職した社員に退職金を多く支払ってしまっていたのでした。過払いの対象者は3名、うち2名は説明して無事返してもらいましたが、残り1名は、返す筋合いはないとして、こちらのお願いに応じてくれません。

 

粘り強く交渉すること約1年、店主が課長になったところで、再度仕切りなおしとして連絡を入れますが、取り付く島もありません。まあ、過払いの金額が5百万円という大金でしたので、ごねるものわかる気もしますが…。数回のやりとりが平行線に終わったところで部長と相談し、民事裁判を起こすことにしました。

 

早速、顧問弁護士と打合せを行い、裁判に向けた手順を確認しました。とりあえず、こちらの主張を伝えたことを証明するため、内容証明郵便を使って数回にわたり、過払い退職金の返還をお願いし、受け入れてもらえない場合の可能性や、最悪の場合、裁判を起こす用意があることを伝えました。

 

 

数度のやり取りのあと、最後通告を行い裁判に入りました。これまでのやり取りなど経緯を時系列でまとめた文書や我々の主張の根拠となる規定、それからなぜ間違いを起こしてしまったかを説明する書類など、弁護士に提出した書類は、あっという間に3、4センチの厚さになってしまいました。

 

それを元に訴状を作成し、裁判所に提出するのですが、この仕事を通して弁護士さんの状況把握力や理解力の高さに驚かされました。毎回の打合せにおいて、店主が提出した文書や規定類をしっかりと読み込んで理解し、さらに論点はなにかというポイントもつねに押さえていました。

 

すでに70才は超えておられたと思いますが、こういう方のことを地頭がいいというのだととても感心させられました。

 

審理が進んで行き、証人尋問を行うこととなり、店主が証人として証言台に立つことになりました。訴状に記載されている経緯や過払い返還請求の根拠などを証言する役割です。事前の打合せは簡単な質問事項をいただき、それに対する回答を作成し、その内容を確認して終わり、という簡単なものでした。

 

 

当日、裁判所で弁護士さんと待ち合わせをし、初めて法定へ入り、傍聴席で待機していました。やがて証言台へ進むよう促され、裁判官から「虚偽の証言をすると罪に問われます」とのひと言にイッキに緊張が高まりました。

 

まずは我々の弁護士さんからの尋問で、これはシナリオどおりに進みました。それでもノドがカラカラで、しゃべるのがやっとといったほどの緊張感です。弁護士さんはテレビドラマで見るとおり、自分の席から立ち上がり、証言台のところまで近寄ってきて、身振り手振りを交えて裁判官へアピールしながら証言を引き出していきました。

 

ようやくシナリオどおりの証言が終わったと思うと、今度は相手方の弁護しから反対尋問です。これはなにを質問されるかわかりませんので、出たとこ勝負です。でもなぜか、こちらの方が落ち着いて対応できたことを覚えています。おそらくうまくやろうとか考えてもムダだと、開き直ったからでしょう。

 

反対尋問で矢継ぎ早に質問され、応答に詰まって裁判官からの心象が悪くなると見るや否や、「異議あり!裁判長!今の質問は本件裁判との関連性がなく、不適切です」 まるでドラマのような迫力で助け舟を出してくれました。おかげさまで反対尋問を無事切り抜けることができました。

 

結果、裁判は無事会社側の勝訴に終わり、控訴もされず、過払い金を取り戻すことができました。しかしながら、ここまで掛かった手間を金額換算すると微妙なところかも知れません。あたり前の話ですが、ミスなく仕事をすることがいかに大切かということをあらためて考えさせられた一件でした。

 

つづく…