ベーシックアイテム
世の中が成熟してきて大量生産、大量消費が見直されて久しい。とくに最近は、若い世代を中心に、価格に関わらず自身の気に入ったモノを手に入れて、永く使うといった価値観が増えてきているようだ。
洋服のジャンルで、この価値観を先取りしてきたのが、まさにアイビーやトラッドといったカテゴリーなのだ。
目まぐるしく変わるトレンドにあわせ、変わっていくアイテムを身に付けたり、髪形やメイクを変化させていくのがファッションとするなら、アイビーやトラッドといったカテゴリーはファッションではないといえる。
永きにわたって着続けられるアイテムを、基本的なコーデとともに輸入し、かつ日本流にアレンジしてルール化したのが、初期の時代のアイビーやトラッドだった。
アイテムを永く着るために大切なことは、いくつか考えられる。この条件を満たさないアイテムは結局、飽きられるか、壊れるかで着ることができなくなるのだ。
まず第一に、いつの時代にも通用するデザインであることがあげられる。奇抜なデザイン発のアイテムではなく、そのデザインであることが必然であり、結果その形に落ち着いたということが大切なのだ。
そのデザインが必然である、というのはいいかえれば「機能的であること」だ。なんらかの目的をもって洋服を着ていて、不都合な部分が改良され、現在のカタチができあがったということなのである。
そのようなアイテムたちが、たくさんの生み出されては消えていったアイテムの中から淘汰されて生き残ってきたものなのだ。
そしてその生き残ったことが、それらアイテムたちに「ベーシック」という、不変の価値をもたらしていくのだ。
結果、ベーシックアイテムといわれるものは、ワークウエアやミリタリーウエアにルーツを持つアイテムが多くなる。
たとえば船上で作業をする際に、風向きによってフロントの合わせを変えて、風の侵入を防ぐようにデザインされているピーコートや、漁夫たちが手袋をしたままでもあつかえるためのダッフルコートのボタンのかわりのトグルという釣り用のウキを使ったものなど、挙げていくとキリがない。
ベーシックアイテムは、身に付けている人に安心感とともに、機能性という価値をもたらしてくれる。これが不変の価値となって、永きにわたって多くの人々に選ばれ、流行に左右されることなく、いつ身に付けても浮かない存在になっていく。
サステナブルが人類の重要なテーマになったいま、服装のジャンルではようやく時代が追いついてきたようである。