モノトーンと禅
アイビーのアイテムには黒や白のみや組み合わせといったモノトーンのコーデはほとんど存在しない。発祥が英国のトラッドにあり、米国で発展してきたからではないかと考えている。
モノトーンどころか、英国発のパターンを見てみると、マドラスやタータンチェックのようなあざやかな色合いのモノも多い。
店主などもあざやかなカラーのアイテムを好むので、アイビーのアイテムにおける鉄板カラーはとても取り入れやすい。
デザイナーズブランド
1980年代のデザイナーズブランドでは、どこのブランドもあらそうようにモノトーンのデザインやコーデを提案した。
そのソリッドでクールな印象は、当時からとてもモダンで新鮮なものであった。このころからわが国のファッションも流行ると全員が飛びつく状態から、一歩すすんで多数が支持するトレンドはあるものの、わが道を行くスタイルであえてこだわって自分の好む服を着続ける人々が増えてきたように思う。
デザイナーズブランドの出現以降、日本人のカラーコーデは、ファッショントレンドが移り変わってもモノトーンがとても増えたように感じる。
ファッショントレンドには、それぞれ鉄板のカラーコーデがあり、それ以外の色のアイテムも用意されるのだが、そのなかには必ず黒が入っていて、そして結構な数が出ているように思う。
室町時代
わが国現在の風俗、文化の原型は14世紀から16世紀の室町時代にできあがったといわれている。能や狂言の芸能にはじまり、枯山水の日本庭園や数寄屋普請の建築、京料理の成立や武家礼式による婚礼その他の儀式などだ。
これら室町文化に強い影響を与えたのは、禅宗の世界観である。華美なデティールを好まず、装飾やムダを排するミニマリズムが、前述の文化のみならず、あらゆるものに影響を与えたといわれている。
店主は日本人がモノトーンを好むのも、現在の文化や価値観に意識もしない形でインストールされている、この禅の世界観が強く影響しているように思うのである。こういった色合いの嗜好もクールジャパンといわれるゆえんのひとつではないだろうか。
日本人のモノトーン好きは、日本文化が染み込んだDNAによるものだと思う。そうでなければ、だれも決めていないのに、就活ルックでほとんどの学生が黒いスーツを着てくることを説明できない。