上質な服を長く着る
店主の家は、洋服に限らずモノ持ちがイイ。結婚して30年になるが、当時そろえたものがまだ現役で活躍していたりする。さすがに白物家電はそうはいかないが、台所道具などでもがんばっているアイテムは多い。
文具などにもその傾向は大いにある。筆記用具や手帳、お気に入りの文房具など、使い込むほどに手に馴染んでくるあの感触は、やめられないものである。
そんな長く付き合っていくモノの代表格が、洋服である。店主のワードロープの最古参は、中学3年のときに買ったフェアアイルベストである。学ランの下に着込んで中学に通って以来、ブレザーやジャケットの着こなしにも重宝され、現在にいたる。まったく古さなど感じさせない。
アイビーはファッションではない
「アイビーファッション」といわれることがあるが、アイビーはファッションではない。アイビーとは普遍的なライフスタイルそのものであり、その一部として洋服などのアイテムやコーデが存在する。
アイテムの多くは、機能的に優れた軍装備品やアウトドアアイテムなどにルーツを持つものがおおく、デザインそのものが必要性に基づいている。また英国トラッドにルーツを持つものも多く、古きよきものを大切に使う文化までいっしょに移植しているのだ。
ベーシックアイテムは変わらない
それらアイビーのアイテムは、そのほとんどがベーシックアイテムと呼ばれ、素材やデザイン、つくりが変わらない。したがって季節ごとに目まぐるしく変わる流行のファッションといは無縁な存在なのだ。
ここがもう一点、店主がアイビーを好むポイントでもある。幅広いコーデを楽しむには、ある程度のアイテム数をそろえる必要がある。しかし全精力と資産を洋服につぎ込むならいざ知らず、多くの一般人はそこまで集中はできない。なので、少しずつアイテムを買いそろえることになるのだが、ベーシックアイテムがゆえに、いつまで経っても着こなしを楽しむことができるのだ。
年代を問わず楽しめる
ベーシックアイテムのもう一つのメリットは、年代を問わず着こなしが楽しめるということである。同じアイテムでも年代によってコーデを変えることで、また違った雰囲気を楽しむことができる。
年代を問わず楽しめるということは、大切に扱うことで長い間身につけることができるのだ。先ほどのベスト以外にも、高校生のときにアイビーからデザイナーズファッションに転向した後輩から譲り受けたダッフルコートや浪人時代にビームスでバイトしていた友人にすすめられたマウンテンパーカーなどまだまだ現役である。
エコシステム
流行のファッションアイテムを楽しむことはまったく否定をするつもりはないが、上質なものを手に入れて長く楽しむというのも悪くはないと思う。それらの洋服が寿命をまっとうするまで付き合うのだから、上質な暮らし方だと思うし、それらの洋服には一緒に過ごしてきたときが刻まれているのである。
なによりもお気に入りのものを長く使い、そして親子代々引き継いでいくようなモノの使い方こそ、エコシステムだと思う。それでなおかつコーデなどを楽しめるのだから、ライフスタイルの一部と呼ばれるゆえんなのであろう。