立替金残高
前々職では給与計算の部隊も社内に持っていて、国内単独4千名と駐在員2百名分の給与計算を行っていました。メンバーは係長以下6名で毎月の給与計算から賞与計算、給与改定、社会保険の得喪、それから厚生制度の運営と手続きまで幅広く行っていました。
給与計算の仕事は、専門性はそれほど高いわけではないのですが、とにかく間違えが許されず、また膨大なデータを処理していくため、基本的な事務スキルはレベルの高いものが要求される仕事です。
毎月の給与計算は、全員分、全項目の投入データが入って計算がまわり、計算結果が投入したデータや入社、退社などの変化点を加味した理論上の計算結果と実際の計算結果が1円単位までピッタリ合って確定します。
確定後は計算結果から振り込みデータを作成して銀行へデータを送った後、明細(当時はまだ紙の明細でした)を印刷して配ると支給の実務は終了です。一方でそれら給与支給に伴うお金の動きに合わせ会計伝票を起票していきます。
基本的に給与を支払いつつ、各人から税金や社会保険料などを控除して預かり、それをまとめて外部に支払うというお金の流れを、何十もの項目で繰り返していきます。全員にきちんと給与が支給されれば、そんなに難しい作業ではないのですが、社員の中にはさまざまな事情で働けず、給与が支給されない場合もすくなくありません。
給与から引き去ることができませんので、基本的には個人払いに切り替えますが、社会保険料などはどうしても会社が一旦立替えをして、後日社員から徴収する必要が出てきます。
それらの管理は台帳を作って立替えた金額の管理をしていくことになるのですが、店主が部長になったこのころ、それまでの台帳の金額と経理で集計した科目の残高に数百万円の差異があって問題になっていました。
本来であれば、毎月もしくは少なくとも四半期ごとに台帳と残高を付け合わせて、差異をなくしていく必要があったのですが、担当者が入れ替わったり、台帳の管理そのものを担当者任せにて、チェック機能が働いていない状況になっていたのでした。
早速担当者を決めて、メンバーを集めて打ち合わせを行い、具体的な作業項目とスケジュールをまとめました。その際には、目標とする完了日程とその間の定期的な進捗報告も設定し、小さなPDCAを回していくようにしました。
担当メンバーは、毎日定常業務が終わった定時後に集まって差異つぶし込みの作業を地道に続け、約半年間かけて膨大な資料を洗いなおして差異を数十万円単位まで縮めてくれました。
最後は、本部長に結果を報告し、つぶし込みきれなかった差異については、稟議書を起こして処理をすることにし、あわせて今後同じことが起きないよう、歯止めとしての業務フローを新たに設定することで了解をもらいました。
ちりも積もればとはよく言ったものですが、日々の小さな作業においても、不具合を放っておくととても大きな問題になっていくということを実感させられた出来事でした。
つづく…