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人事屋修行記(第124話)

内部通報

企画担当になったものの、人事課長時代に担当していたいくつかの仕事は、後任の課長にすぐに引き継ぐのは荷が重いと、当面の間担当することになりました。その中には従業員の賞罰に関する仕事がありました。

 

従業員に就業規則に定める懲戒規定に抵触するような行為があった場合、事実関係を調べた上で、労使で構成する賞罰委員会を開催し、処分案を決め役員会に答申します。その答申案に基づき、役員会で処分内容を決定して具体的な懲戒処分を行うという仕事です。

 

国でいう三権の行政権と司法権を一手に担当する実に大きな権限を持った仕事のように見えますが、実態はとても地味な仕事でした。第一、会社の仲間がルール違反を行ったかどうか確認して、事実であれば処分をするのです。非常に気分の悪いものでした。

 

我々がそのような事実を知るのは、通報窓口への匿名の投書というのが一番多いパターンでした。店主が企画担当になった当時にも投書が届きました。内容は職場で高校野球をネタにした野球賭博を会社で大々的、組織的にやっている、というものでした。

 

 

調べてみると投書どおりの内容で、結局関わったメンバーは全員懲戒処分にして、中心メンバーは降格という重い処分がなされました。

 

当時はコンプライアンスという言葉が一般化してきた時期であったものの、一般の従業員の意識は昭和の時代からそれほど切り替わってはいませんでした。処分内容を決定する際には、大いに議論がなされ、ずいぶんと案をまとめるのに苦労しました。

 

もう時効なので書いても問題はないと思いますが、店主の新入社員時代などは、工場の主要メンバーが参加するゴルフコンペが毎年開催され、役員から若手まで結構幅広い層が参加していました。その工場コンペをネタにして、馬券を社内で堂々とチラシやポスターまで作って宣伝し、工場ぐるみで開催していました。

 

馬券を買うのも参加者だけではなく、まったくゴルフには関係ないような従業員や工場に出入りしている業者の担当者まで巻き込んで行われていました。当然店主も先輩から無言の圧力の下、馬券を購入させられたのは言うまでもありません。

 

職場の仲間内での賭け事や、社内での暴力沙汰、飲酒運転やパワハラなど、以前であれば法律違反ではあるものの、まあよくあること、というって大目に見られていたことが、世間の目がそれを許さなくなり、会社も厳しい対応をせざるを得なくなってきたのでした。

 

野球賭博をやっていたメンバーもそのような世間の変化の潮目のようなものを感じ取れずに、以前からやっていたことをいままでどおり当然の感覚でやっていて、悪いことをしたという認識もなかったのだと思います。

 

ここ10~20年、グローバル化の進展にしたがい、このような説明のつかない企業の振る舞いというのは許されなくなってきた感があります。我々も今一度、世間の環境変化に目を向けて、いままでのあたり前を見直す必要がありそうです。

 

つづく…