3-3.チェックの大切さ
事務職の仕事というのは、ほかの職種にくらべて間違いがわかりにくいという特徴を持っています。たとえばメーカーなどのモノづくり現場であれば、製品が工場から出荷されるまでに何重もの検査工程を経て、お客さまの手にわたります。なにか不具合があれば検査工程でわかるし、最悪検査工程をすり抜けてしまった場合でも、お客さまからフィードバックがくるのです。
その点事務職の仕事は、経理で財務諸表をまとめて提出するとか、請求書を処理して手形や現金を振り込んだり、人事で給与計算をして給料を支給するなど、間違いが即発覚する仕事は少数派です。
この少数派の仕事を経験した事務職さんは、最初に成果物の品質不良を出すことの重大さと、それを防ぐための基本をみっちりとたたき込まれるので、その後どの仕事にローテーションしても問題は起こさないのですが、新卒でそのような職場に配属されなかった場合には、自らトレーニングする必要があります。
たとえば給与計算はものづくりの仕事と似ていて、担当者にとっては4千5百件分のうちの1件の間違いかもしれませんが、お客様である社員にとっては、1ヶ月間汗水たらして一所懸命働いたすべての結果としての給料であり、それが間違っていたということは、会社からのメッセージそのものが不良品だったということなのです。要するにお客様にとっては、1分の1の間違いであり、不良品ということです。
つくった資料や文章を1回も見返さないで提出してきたとしか思えないようなイージーミスが、それも1ヶ所だけでなく何ヶ所もあるような仕事ぶりをみると、仕事だけでなくその人の仕事に対する姿勢まで信用できなくなってしまうのは筆者だけでしょうか。
事務職の仕事は生産ラインのように検査工程が科学的に設計されておらず、チェックのやり方まですべて担当者にゆだねられています。それだけ一人ひとりが信頼され、高い事務スキルを持っている存在と位置づけられていることをしっかり認識して仕事に取り組んでほしいと思います。