書類の見える化
店主が新卒で入社した会社は、退社時に机の上を片付けてきれいにして帰るルールになっています。(一部守られていない部門もありましたが…)新卒でその会社に入社したのであたり前になっていますが、他の会社から見るとずいぶん奇異に写るようです。
この退社時机上整理ルール、いつ、誰が始めたかはわかりませんが、以前ホンダさんの創業者の本田宗一郎さんの女房役で、創業時から営業や管理を一手に引き受けて、ホンダさんを経営の面から支えた副社長の藤沢武夫さんの書かれた本を読んだことがあります。そこには、創業当時からのホンダさんをどのように経営してきたかの本質を語るエピソードがたくさん書かれていました。その一つが退社する際の書類の整頓ルールです。
藤沢さんいわく、「机の上に書類が出ているということは未処理の状態。その日のうちに書類をすべて処理して帰れば、帰った後の机の上は常に何も載っていない状態なので、仕事が終わったことが一目でわかる。つまり事務仕事の見える化である」というものでした。
新卒で入社した会社の運用がそのようなポリシーで行われているとは思いませんが、そもそもの退社時机上整理ルールのスタートはこのような考え方に基づいていたそうです。おそらくその考え方に共感した誰かが見習おうとはじめたのでは、と思います。
最近では、社内決裁の電子化が進み、以前に比べるとかなり書類の枚数は減ってきています。それでも書類はなくなるまでには時間がかかるでしょうし、そもそも書類が電子申請書に変わっただけで、扱うべき案件自体は減っていません。確かに書類を電子化すると決裁済み、未決裁を問わず、書類として整理をしておく必要がないので、その分の無駄な工数は省けているのですが、危惧するのはそのことで、書類整理のノウハウがだんだん薄れてきているのでは、ということです。
以前は、仕事の出来不出来を左右する大きな要素の一つとして、書類管理のスキルがありました。たくさんの書類を的確に整理し、必要なときにすぐ取り出せて、不必要になればサッサと廃棄する。この一連の流れを身に付け自然と仕事の中で出来るということが、効率的でスピード感のある仕事を行うための大切な手段の一つでした。これは書類に限らず、職位が上がって行くにつれて情報という言葉に置き換えられると思います。
この書類や情報の管理の仕方で大切なのが、見える化だということを、若いころの仕事でしっかりと身に付けさせられました。実務を担当しているころは、毎日各職場から上がってくる書類の山との格闘でした。給与と勤怠の担当をしていた店主としては、毎日数十枚以上くる書類を一つの抜けモレもなく、かつ間違えずにタイムリーに処理していかなければなりません。そのどれ一つ欠けても最終完成品である給料の計算結果が不良品になってしまいます。
どの書類も受け取った瞬間にその場その場で、決められた置き場にルールどおりに置き(ファイリング)、誰が見てもすぐわかるようにしておくなど、文字で書くと簡単なことをしっかりとやり続けることが大切であるということを痛いほど感じさせられました。なぜなら少しでも手を抜くとすぐに不良品を出してしまうからです。
店主が今まで見た人で効率的に仕事をこなす優秀なビジネスパーソンは、例外なく机がきれいですね。机が汚くても優秀な仕事をする人はいますが、机がきれいであればもっと効率的に仕事ができて、もっとたくさんの結果を残すことができるのにと思ってしまいます。
みんなで机がきれいな人を目指したいものです。
つづく…