執行役員制度
人事企画室への異動後、最初の大きな企画は、執行役員制度の導入でした。前々職では、1997年に系列のグループ3社が合併して取締役が30人を超え、経営の効率化による合併効果を狙い、当時流行り始めていた執行役員制度を導入しました。
しかし、動機が不純だったことや、経営陣も含めて制度の本質への理解が不十分で運用も稚拙だったことから、制度が形骸化してしまい、2002年に一旦廃止していました。
2000年代後半になり、コーポレートガバナンスへの関心が高まると、取締役の人数に対してステークホルダーの視線が注がれるようになり、大手企業を中心に取締役のスリム化と社員の昇進目標としてのゴールポストの確保を目的に、一段と執行役員制度の導入が進みました。
前々職会社は当時十数名の取締役がいて、執行役員制度を既に導入している親会社と取締役の人数が逆転していました。さすがにこれでは見かけ上、株主や市場からの理解は得られにくいということになり、人事企画設立後の最初のテーマとして指示が出されたのでした。
当時は日本企業に執行役員制度が導入されて10年以上が経っていましたので、それなりに参考書の類も出ており、早速店主は紀伊国屋本店に出かけて行きました。ネットが普及したとはいえ、使える参考書を探す際にはやはり、手にとって中身を見てみなければわかりません。新宿という場所のありがた味が感じられる瞬間です。
ひと通り参考書を読みながら、制度に関する考え方を自分なりにまとめ、その上でこれまでの上司などとの会話や、最近の経営会議などでの役員などの発言などから課題感を整理してみます。ノートに内容を書き出し見える化していくことで思考が整理され、だんだんと論点を明確にしていきます。
ある程度整理されたところで、仮説を立てて案をまとめ、ポイントとなる論点を入れて資料にまとめます。それをベースに上司の専務とディスカッションを重ね、全体像から詳細のパーツのディテールへと認識をあわせていく、そんな作業を繰り返し、企画を組み立てていきました。
企画が苦手という人と一緒に仕事をすると、最初からきれいにまとまった数十ページにもなる大作を作り上げて、上司のところに持っていって玉砕するっていうパターンの方がとても多くいます。
相手の上司もたいていは自身で答えを持っていないことが多いので、最初から決め打ちで最終版をもっていくより、一緒に考えるための材料や論点を整理するような資料をはさんで議論をしながら、お互いに考え方を深め、認識をあわせていくやり方を店主は好んでいて、結果として効率もいいような気がしています。
前々職では、親会社の役員クラスが転籍して社長へ就任することが慣例のようになっていたので、制度がほぼ固まったところで、説明にいくことになりました。お相手は取締役常務執行役員の管理本部長です。本社ビルの上層階にある役員専用の応接室に通されました。
廊下から応接室まで真っ赤な絨毯が敷き詰められており、秘書の女性が3人掛りでお茶を入れていただきました。非日常的な緊張するシチュエーションで、おそらくいままでの会社人生で一番クラスが高い方との打合せだったと思いますが、なんとか無事に終わることができました。
親会社の内諾も取り付け、取締役会での手続きも終え、2012年から新たな執行役員制度をスタートさせ、人事企画室最初のテーマを完了させることができたのでした。
つづく…