ローファー
IVYの足元をまずあげるとすれば、やはりローファーであろう。ひもを用いないスリッポンタイプで、そのシンプルなデザインからその守備範囲の広さは、他のどのシューズも寄せ付けないほどである。
もともとは、米国での室内履きに用いられていたものが、米国でIVYアイテムとして広がっていき、日本にも他のIVYアイテムとともに持ち込まれ、不動の地位を確立していくことになる。
この革ぐつでありながら、カジュアルな性格のローファーは、IVYという枠をはなれて独自の地位を確立してい行く。カチッとした制服との相性がいいことから、中高生の一足目の革ぐつとして選ばれるようになり、その後、ブレザーと同じように制服の一部として取り入れられるようになった。
IVYにおけるコーディネイトでも守備範囲は広く、なんにでも合わせられるといっても過言ではないくらいだ。
オーソドックスにブレザーとフラノのウールパンツにスタートして、パンツを変えていっても、各種ウール素材からコットンのチノパン、IVYジーンズの定番である、ホワイトジーンズや生成りのパンツ、はてはブルージーンズ、それも色落ちしていないものから、いい感じに色落ちしたものまで、どんなパンツにあわせられる。
なのでIVY入門編では、まず一足目に買いそろえるくつといえば、ローファーということになる。ローファーとスニーカーを一足ずつ持っていれば、当面ほかのくつは必要ないという、便利このうえないくつなのである。
一方でこのようなオーソドックスなくつがゆえ、そのバリエーションの広さや奥の深さも特別なレベルである。
ローファーの特徴である甲のストラップをサドルと呼ぶが、このサドルの長短でハーフサドルとフルサドルに分けられる。ハーフサドルのうち、ハルタやリーガルのベーシックデザインでおなじみの、サドルがモカシン編みの部分に巻き付けられいている部分をビーフロールという。
このサドルの長さ、処理方法からはじまり、コバというくつ底の張り出し具合や、身頃の幅、またスウェード素材を用いたものなど、ローファーのなかでもカジュアルからドレッシーな雰囲気を持つものまで、同じくつの種類のなかでこれほど幅広い種類がみられるのもめずらしい。
最近は高校生以外でローファーを履いている方になかなかお目にかかれないが、オフィスでのカジュアル化がすすむ中で、このような使い勝手の良さから、そろそろ何週目かの流行りがきてもよさそうである。というか、IVYには流行りがないので、いつの時代に身につけていてもおかしいものはないのであるが。