Cafe HOUKOKU-DOH

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人事屋修行記(第10話)

配属先発表

実習も後半に入り、そろそろ正式配属が待ち遠しくなってきました。店主は真面目に就職活動をやっていませんので、会社に入ってやりたいことなど考えてもいませんでした。ただ、面接のときに調査票に希望職種を書かなければならず、消去法で総務・人事にまるをつけただけでした。

 

正式配属の通知を翌週に控え、漠然と通勤に使うクルマのことを心配していました。当時、店主は中古のクラウンワゴンに乗っていたのですが、正式配属された後に会社に通勤するのにホンダ車以外はなんとなくまずいか(本当は新しいクルマが欲しかっただけですが)と考え、週末にディーラーに見積もりをとりに行きました。

 

話しを聞くと納車までちょうど一ヶ月ということで、翌週末に契約すれば間に合います。もうすっかり買う気になっていたのですが、その日はあいにく印鑑を持っていなかったので、仮申し込みということで、翌週印鑑を持ってきて正式に契約するということで、その日は帰ってきました。

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会社から内定を受けたとき、川崎工場や本社があることは当然知ってはいましたが、まだ学生気分の抜けない店主は、「地元が仙台の人間をわざわざ関東へ配属するわけはない」と勝手に思い込み、自分は宮城県の工場に通うものと決めつけ、その他の可能性は頭から否定して考えてもみませんでした。

 

翌週の水曜日、午後の休憩後に会議室に集められ、正式配属先の発表がありました。初めての会議室にドキドキしながら入るとそこには、工場の総務課長と採用のときにお世話になった人事の方がいました。

 

店主は宮城県の工場への勤務は疑っていませんでしたが、その職種になるのかが心配で、相当緊張していて、のどが渇き、心臓が飛び出しそうなほどでした。

 

総務課長がうやうやしく一人ずつ配属先を発表していきます。寮の部屋が隣で一番仲が良かった同期は、彼女を東京に残してきたということで、どうしても本社勤務になりたいといっていました。彼の番がくると「管理本部経理経理課(本社)」と告げられ、小さくガッツポーズをしています。

 

続いて店主の名前が読み上げられました。「管理本部総務部総務課川崎総務グループ(川崎工場)」一瞬、「かわいそうに川崎に行くヤツいるんだ!」と思い、自分のことと受け取れませんでした。でも、段々時間が経ってくると、もしかしてコレッて自分のこと?と頭がパニックになっているのか、その言葉を真実として受け入れたくないのか、頭の中が整理できません。

 

発表自体はほどなく終わり、状況が飲み込めない店主は、そこにいた人事担当の方に「あの、勤務地は川崎工場ってことですか?」と万が一の聞き違いの可能性に賭けて尋ねました。「そうだよ、同じ課だからよろしくね!」それ以降、職場に戻りラインで作業をし、寮に戻るまでの記憶はありません。

 

その日は寮に戻ってから、仙台に実家の急いで帰り、緊急の家族会議を招集しました。両親もびっくりでしたが、店主自身がこの決定をどう受け止めていいのか理解するまでには、まだしばらく時間が掛かりました。クルマは泣く泣くキャンセルしたのは言うまでもありません。

 

つづく…