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人事屋修行記(第27話)

人事の目的

 

人事に配属になって半年か一年くらいたったころ、ひとつのことに悩んでいました。仕事をしながら、いろいろな場面場面でさまざまな判断をしていくわけですが、よかれと思って判断したことがことごとく、上司の係長と食い違っているのでした。

 

当然、店主なりに判断をして「こうしようと思うのですがいかがですか?」と確認すると、まったく反対の指示を出されます。かといってなぜそのような判断になるのかの説明はありませんし、たずねても「当たり前じゃないの」のひとこと。コレには結構悩みました。

 

当時の店主の考えでは、人事というのは会社の中におけるサービス業なので、いかにお客さまである従業員が働きやすくなるよう、さまざまなサポートをすることが人事の目的と考えていて、その原則に従ってどの場面でもどうすべきかを考えていました。ところが上司の指示はことごとく違いました。

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規定の文書一つの解釈でも、厳しくもあまくも解釈できる文書を、常に厳しく解釈することを要求されました。そんな上司に店主は、ホントはそう解釈する必要なんかなくて、ただ単にいじわるなのではないかとさえ思っていました。

 

ある日、本社人事で採用のときに面接してくれた先輩が川崎工場に仕事で来ました。その先輩は、面接から内定式、入社時研修や正式配属など何かと気に掛けてくれていて、いつも店主に声を掛けてくれていました。川崎工場には年に何回かという感じでたまにしかきませんでしたが、くるといつも声を掛けてくれていました。

 

その日は「赤坂、今日何時にあがれる?」と突然先輩にきかれ、ビックリしながらもすごくうれしくて、「ハイ、定時には大丈夫です」とこたえると、「じゃメシでも行こうか」と初めて誘ってもらいました。本社の経理に配属された同期はしょっちゅう誘われているのは聞いていましたから、ようやく誘ってもらえたと内心大喜びしていました。

 

武蔵小杉のつぼ八だったと思いますが、そこのカウンターで緊張しながらも初サシ飲みはスタートしました。ジョッキも杯を重ねある程度いい気分になってきたころ、思い切って悩んでいたことを正直に質問してみました。

 

「人事の仕事の目的ってなんなのですか?よかれと思ってやろうとすると、ことごとくダメだといわれるのですが…」そんなとりとめもないような質問をぶつけてみると、少し考えたあとにやさしくこう説明してくれました。

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「人事の仕事の目的は、労務費を効率化することだと思うよ。要は、正しい仕事のアウトプットに対して、過不足なく正しい給料を支払ったり、過不足のない適正な処遇や取扱いをすることで、労務費の費用対効果が最大化していくということだと思う」この説明は目からウロコでした。

 

今まで従業員によかれと思って考えてきたことが、まったく違った視点で考えていかなければならないということに気づかされたことに、一番驚きましたが、それ以上に当時まだ30才前だったその先輩が、あっさりと人事の仕事の本質を簡潔な表現でわかりやすく説明してくれたことに感動しました。

 

その日以降、店主のもっていく取扱い案は、上司に一発でOKをもらえるようになったのはいうまでもありません。

 

つづく…