東京
新卒での配属は川崎工場だったので、最初の1年弱は電車通勤でしたが、いわゆる「タテライン」と呼ばれる南武線での通勤で、あまり首都圏らしくない通勤電車内の風景でした。
1999年から通い始めた本社は新宿にあり、社宅を杉並区の西荻窪に借りたので、通勤は中央線という首都圏を代表する路線を使うことになりました。中央線は、八王子や立川、国分寺などといった、多摩地区から新宿、東京といったビジネスの中心地を一本で結ぶ便利な路線です。
混雑率も結構首都圏でも上位にランクされるのですが、丸の内、八重洲、新宿といった場所にある大手企業に勤めるビジネス客の比率が非常に高いのも特徴の一つです。そんな電車で毎朝通勤をしていて、店主の行動を変えさせた一つの出来事がありました。
朝早くの通勤電車で、当時の「イマドキ」のチャライ格好をした20代前半と思われるサラリーマンが日経新聞を丹念に読んでいるのです。かく言うこちらは、前日の深酒がたたってお約束の二日酔いです。
でもあんな格好をしたアンちゃんも朝から必死に情報収集している事実を目の前にして、二日酔いで通勤している場合じゃないと衝撃を受け、その翌日から駅売りの日経を買って読むのが日課になりました。
朝食は、新宿に出てから駅周辺の立ち食いソバやファストフード、喫茶店なのでとることがほとんどでしたが、ここでも衝撃を受けることになります。
店主は、ラッシュの混雑がいやなので、朝はその当時から早く会社に出勤していました。だいたい7時には新宿に着くよう通勤していました。
その時間帯にファストフードや喫茶店に入ると、すでに大勢の人がいて、それぞれがおもいおもいの自己啓発をしているのです。新聞を読んでいる人はもちろん、英語のリスニングをを聴いている人、資格取得のテキストを勉強している人、なかには数人で集まって外国人から英会話のレッスンを受けている人などもいました。
世の中のビジネスパーソンはこうやって自らの能力を高めて、仕事に活かしてより高い成果を目指しているのだということを目の当たりにして、自分もこのままではビジネス社会での競争には生き残っていけないとつくづく実感させられました。
地方勤務でクルマ通勤だとどうしても付き合う人々が限られてきて、いい意味での刺激を受ける機会が少なくなってしまいます。
店主は以前から専門書などは読んではいましたが、本社勤務でこんな経験をして以降は、そのペースも上がり、また幅も広がり、なによりもネットワーク作りなども心がけるようになりました。世間標準のビジネスパーソンの行動というものを身を持って知るという、とても大切な経験をした時期でした。
つづく…