Cafe HOUKOKU-DOH

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人事屋修行記(第81話)

お作法

2002年から2003年にかけての採用活動は、店主も新卒2年目の担当者もはじめての経験だったこともあり、シーズンをとおしてすべて二人三脚で進めていきました。当時は3年生の10月にリクナビなどの就活サイトがオープンし、11月から3月くらいまで合説や学内説明会という母集団形成の期間が続きます。

 

採用活動は、いかに会社を知らない学生さんに認知してもらい、その後の会社説明会や選考にきてもらう人数を増やすかという母集団形成が非常にポイントとなります。なので、この3月までの時期にいかにさまざまな場所で学生さんの前に顔を出して会社をPRしていくかという活動が重要です。

 

 

ネット利用の就職と採用になったからこそ、ライブで顔を合わせて得た印象や情報が逆に重要度を増してくるものです。我々は、できる限りの学内説明会に参加するという方針を立てて、それこそ日本中を回り始めました。

 

担当者の女性は、何もかもが始めてですので、学生さんの前でアドリブを効かせながら、会社説明はまだ難しく、最初の1~2ヶ月は店主が同行して会社説明をやって見せ、そのうち1回、2回と説明を担当する回数を増やしていくようにしました。

 

必死に原稿を作って何度も練習をして、ひと通りの説明はできるようになったのですが、難問は学生さんからの質問です。特に当時いたは理系採用がメインで、それもクルマやバイク好きといったマニアックな連中が多く、ときに就活とはまったく関係のない質問をしてくる輩もたくさんいます。

 

 

そんな連中をひとりでさばいていくには、それなりに場数を踏むことが必要で、1年目はずっと同行するしかないかとボクもなかばあきらめていました。

 

当然、出張はかなりの回数になります。朝、目的地への移動のときは、新聞を読んだり、寝たりと話をすることも少ないのですが、仕事が終わって帰りの新幹線では、だいたい一杯やりながら帰ることがほとんどでした。

 

そんな彼女も、初めての出張で東京駅から帰りの新幹線に乗るときに、店主は財布を渡してビールとつまみなんでもいいから買ってくるようにお願いしたら、350缶2本とじゃがりこ1つだけ買ってきて、店主に指導されました。その後は、東京から白石蔵王間の場合には500缶4本を最低買ってくるようになりましたが。

 

 

出張の帰りに新幹線の中で一杯やるのも、これは先輩から引き継がれる伝統のようなもので、店主も先輩から教えられ、帰りの新幹線は必ず飲むものだというようになっていて、後輩にも自然とそのように振舞っていました。

 

しかし、会社が違ったり、同じ会社でも職場が違うとその習慣というかしきたりみたいなものは、まったく違うということを、その後、いろいろな人と話をする中で知り、少々驚いたものでした。

 

 

これは、何も出張のお作法だけに限らず、仕事を進めていく上でさまざまな場面で見ることができます。伝言メモのとり方や電話の掛け方、アポイントの取りかたやスケジュール調整の仕方、議事録の取りかたや資料のまとめ方など職場が違うとまったくやり方が変わっていて戸惑うこともたくさんあります。

 

 

よく言われる、新卒で会社に入って最初に配属される職場や上司、先輩がとても重要というのは、このことです。初めて仕事というものを覚える新入社員は、幼い子供が親の行動を真似するように、職場の先輩や上司の立ち居振る舞いを、よくも悪くもそのまま受け入れます。

 

ですから、社会人になって最初の職場から受ける影響というものを、受け入れる先輩はもちろん、配属される新入社員も心して日々の仕事に取組んでいくことが必要だと思っています。

 

そう考えると、出張の際に何をどのくらい飲んで帰るかなどは、些細なことかもしれません。

 

つづく…