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人事屋修行記(第135話)

労使TOPミーティング

前職の会社では、ショップ制の労働組合があり、組合対応というのも人事の重要な役割の一つでした。労使の公式なコミュニケーションの場は、春闘などの団体交渉の他に、労使協議制というおもに経営側が経営計画策定の前提条件となる環境認識やビジネス、自社の現状なども含めて情報を共有して、組合に会社施策に理解と協力を得る場を設けていて、その仕切りも重要なイベントでした。

 

労使協議会は年に2回、上下期の決算発表のタイミングに合わせて行われていました。出席者は労組側は、委員長以下、書記長、書記次長4名の計6名、会社側は、社長以下、交渉委員長の専務、副交渉委員長の取締役常務執行役員の管理本部長、そして事務局として人事部長と人事企画課長、労組担当の主任の計6名です。

 

タイムスケジュールとしては、午後2時から2時間半程度、会社の役員会議室で双方がテーブルに着き、決算内容の説明ならびに中期計画、当年度計画の説明を行い、質疑応答ならびに意見交換が行われます。その後、第一部は終了し、場所を食事会場に移して第二部の懇親会が行われます。

 

5月上旬の決算発表後に行われる今回のトップミーティングは、人事部長としてのはじめてのイベントであり、社長も前年の総会で交代していましたので、経営計画を説明したり、懇親会も含めた内容ははじめての参加でした。

 

第一部は、栃木の研究所での開催となり、第二部会場は宇都宮市内にセットすることになりました。宇都宮は大企業の工場や研究所がたくさんある割には、こういった公式な飲食付イベントを行えるところが少なく、候補は必然的に限られてきます。この年は、駅から少し離れたホテルの割烹料理屋の座敷で実施することにしました。

 

 

場所の段取りなども含め、イベントの準備は労組との調整も含めて経験のある人事企画の課長と主任にお願いし、内容は事前に数回の打合せで報告を受けていました。ミーティングの数日前には社長に対し、アジェンダや事前に労組から来ている質問内容とそれに対する回答案の説明を行い、想定内の宿題をもらって準備は完了です。

 

ところがイベント当日の昼食前になり、管理本部長から突然電話が入ります。「 社長がQ&Aの内容で、こういう資料が欲しいと言っているんだけど、準備できている?」事前の説明を行ったにも関わらず、当日になってこういう話は人によってはよくあります。実はこの社長も常習犯ででしたが、当時はそんなに付き合いも長くないことから、まだそこまで先を読んだ準備はできていません。

 

なんとかイベントまでに間に合わせ、社長に資料を説明し、イベントスタートです。司会進行は人事部長の担当で、いままで築いてきた労組幹部との人間関係もあり、スムーズに進行することができ、第一部は終了です。

 

第二部は、ホテルに会場を移してスタートでしたが、ここでトラブル発生です。会場に行ってみると、和室の個室ではあるのですが、隣室とは襖で仕切られただけで話し声が筒抜け、隣ではすでに宴会がスタートして楽しそうに談笑が始まっています。

 

これはまずいと思い部屋を変えてもらうよう調整している最中に社長以下労使メンバーが到着してしまいました。部屋に入った社長はひと言「こんな場所で労使の大事な話しができるか!」と店主は一喝されてしまいました。

 

結局、代わりの部屋は準備ができ、15分ほど遅れで第二部はスタートしました。店主は第二部にも席が用意されていたのですが、当然飲み物や食べ物に手をつける雰囲気ではなく、逆に労組幹部が気を使って声を掛けてくれる始末です。あの2時間弱はその場に座っているのがとてもつらく、長く感じられ時間でした。

 

長い第二部が終わり、労組幹部、社長をタクシーに載せ一息ついていると、プロパーの専務が店主の顔を見てひと言「今日はお疲れさま。まあいろいろあったけど、社長に朝一番、今日はよろしくお願いします、ってあいさつに行ったはうがよかったかな」と優しく声を掛けてくれました。

 

二人の部下は一所懸命がんばってくれましたが、肝心な会場の現場確認を任せっきりにしてしまったことと、社長とのコミュニケーションをしっかりととっていなかったのが、最大の反省点でした。やはり仕事のミスのほとんどはコミュニケーション不全が原因だと考えさせられた仕事でした。

 

つづく…