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人事屋修行記(第158話)

プロジェクト(2)

このプロジェクトの実働部隊は、元生産企画部長の四輪事業企画担当執行役員と同じく元生産企画の主任技師、それから人事企画で労組窓口を担当している主任と店主の4名でした。まずは4人で集まって早期退職プログラムの実行を判断する経営会議の資料作りからスタートです。

 

直近数年の単独の売上と人件費などの固定費、損益分岐点のトレンドをならべ、さらに中期計画のベースとなっている主要取引先の事業計画に基づいた売上、生産見通しに対する損益分岐点を引いていきます。

 

 

そこから逆算していくらの人件費で単独事業をオペレーションしていけば、営業利益が持続的にプラスになるのかを導き、削減すべき人件費から逆算して人数を計算していきます。

 

長期の見通しはなかなか立てずらいものですが、そこはある程度仮説をもとに前提条件を設定し、そこへ生産ラインの海外移転など最悪のシナリオも入れ込んで条件を設定していきました。その結果、少なくとも今後5年間収益をプラスにするには、4百名分の人件費を下げる必要があることが分かったのです。

 

それは、国内単独の1割という人数でした。4人のメンバーは一同顔を見合わせました。4百名という数字だけを見ると大手のリストラなどと比べて小さな規模に感じるかもしれませんが、10人に1人の割合というと受け止めが変わってきます。

 

 

まして、ターゲットは年令の高い層であり、その母集団に占める割合は2〜3割にもなります。メンバー一人ひとりが、かなりの痛みを伴うミッションであるということを強く意識した瞬間でした。

 

削減の規模感が決まれば、ここからは人事の担当です。退職日を期末に設定し、そこから逆算してスケジュールを引いていきます。人にまつわる施策というのは、発表してから退職までの期間は短ければ短いほど組織に与える悪い影響が少なくて済みますので、説明、説得まで含めできるだけタイトな線を引いていきます。

 

募集期間を2月上旬に決め、発表はそこからさかのぼること1ケ月半前の12月中旬としました。発表後、全員が一度は具体的な募集条件を聞く機会を持ち、それを踏まえて年末年始の連休中にしっかり考えて結論を出してもらうことを目論んでのことです。

 

 

スケジュールを決めるにあたって悩んだのは、どのような体制で人事説明を進めて行くかでした。前々職の会社は、生産拠点が宮城県に集中していて、単独4千人のうち3千人が宮城県に勤務していました。

 

通常であれば、人事メンバーで手分けをして進めるのですが、人事部の3人の課長のうち2人は地元出身でした。施策実施後のことを考えると、彼ら彼女らに担当させるわけには行きません。結局店主と、本社勤務の主任の2人だけで進めることにしたのでした。

 

つづく…