Cafe HOUKOKU-DOH

~ホッとひと息的な読み物でブレイクするサイト~

人事屋修行記(第88話)

準備

2005年の年始、店主はあることを自分に課しました。日経ビジネスを自腹で定期購読し、経済や企業経営、世の中のトレンドなどの知識を習得し、日頃会社で実務にあたるときも、つねに高い視点や広い視野をもって物事を見るように心がけていこうと。

 

こうして、日経ビジネス定期購読の1年契約を約2万5千円で申し込みました。さすがに3年契約とは行かなかったのですが、自分としては、結構な決断でした。当時の店主は、今のように本を常に読んでいるわけでもなく、どちらというと読書は苦手で、読むスピードも理解も遅く、活字を読むのが苦痛なタイプでした。

 

人事の仕事をしていると、あたり前の話ですが、会社の人事制度には精通してきます。どんなタイミングでどのような能力を、どのような切り口で評価判断され、昇進や昇格、人事などに反映されていくのかが、手に取るようにわかります。

 

仕事柄、そういう情報を得られるのであれば、得られた情報をしっかりと認識した上で、自身の能力開発における目標にしていき、段取りよく事前に自己研鑽して必要な能力を高めていくことが期待されているのだと考えました。

 

当時、店主は主任に昇格して3年目でした。4年目であるその年は、うまく行けばそろそろ昇格試験の声が掛かるかもしれない、でも、声が掛かってから準備をしているようでは、そもそも遅すぎると考え、何か自分なりに準備をしなければと考えていました。

 

役職昇格のアセスメント試験は、17項目の中級管理職に必要な能力(ディメンション)を4つの演習を通して評価していきます。4つの演習とは、インバスケット演習、グループディスカッション演習、面接演習そして分析演習から構成されます。

 

どの演習も日頃の実務の中で、意識しながらマネジメントをしていく中で、能力に磨きが掛かっていくものばかりであり、参考書を勉強したり、いち夜漬けで結果が良くなるものではありません。一方で、日頃の実務の中だけでは得られない、世間一般のビジネスにおける常識や知識といったものも、必要となってきます。

 

店主は仕事柄、毎年そのような演習を間近で見てきて、その必要性を肌で感じてきました。そこで、日本で最も読まれているビジネス雑誌をしっかりと読んでいくことで、世間一般のビジネスパーソンがあたり前にもっている知識を自分もしっかりと身につけていこうと考え、行動に移しました。

 

最初のうちは、一週間たっても一冊読みきれず、次の号が届いてしまうこともしばしば。でも活字を読むということは慣れであり、慣れてくると帰省の新幹線の中で読めてしまうまで、スピードも上がりました。

 

それ以上に驚いたのは、将来をある程度正確に予想している記事も多いことでした。実はリーマンショックが起きる1年以上前に、米国の不動産投資が過熱していて、そのうち破綻するという記事を読んでいました。そのときは、読み過ごしてしまったのですが、後から思い返すと、記者がきちんと警鐘を鳴らしていたのかと思い、マスコミの重要性を再度認識させられました。

 

この時期の経験は、課長時代よりもむしろ部長になってからとても活きてきた気がします。いつの時期にも新しい知識習得はとても大切なことですね。

 

つづく…