就業規則
ここ最近、就業規則について考えさせられる案件が続いた。いずれも社員の取扱いに関する内容だったが、就業規則が置き去りにされ、議論が続いていたのだ。
新卒で入社した会社で工場人事に配属された際、上司の係長になにか相談すると、必ず「就業規則にはなんと書いてある?」と質問された。必然的に上司に相談したり、たずねたりする前には、まず就業規則を確認するのが習慣化された。
30年前である。当然就業規則は冊子に印刷されたものが定期的に配られ、机の中にしまっておき、引っ張り出しては学生が勉強の際に辞書を引くようにして確認した。
ある日、先輩が店主の就業規則を見て、その手垢の付き具合や、表紙のやれ具合を見て、「仕事をしている担当者の就業規則だな」と褒めてくれた。
人事屋としては、肌身離さず、仕事の際にはつねに手元にあるものであった。
就業規則を見て仕事をしている人の少なさ
公務員が法律を根拠に仕事をするように、会社員にも根拠がある。法律で定められているものでは、定款と就業規則である。
大きな会社であれば、定款と株主総会、取締役会の下位に組織規程、業務分掌、職務権限規程などで各組織、各人の役割と権限が定義され、それに従って職務を遂行する。
一方で会社と社員の労働契約の大部分を規定するのが就業規則である。それなのに人事担当者や経営者で就業規則を確認している人が少ないと感じる。
人事担当者レベルならホントはそらんじて欲しいレベルなのだが、少なくてもつねに手元に置いて、サッと確認、引用するくらいの意識は持ってほしいと思っている。
リスク管理の防波堤
就業規則の意味合いとは、会社側からするとズバリ「リスク管理」である。会社は基本的に就業規則などの定めにしたがってしか、社員の職務行動に指示命令ができない。
なので、社員の望ましくない行動などは、すべて就業規則などに記載をして、明らかにし、さらにそれに反する行為があった場合の取り決めを記載しておく。こうすることで、組織内の秩序を保つのである。
さらに最近ではガバナンス意識の高まりから、ハラスメントや個人情報保護、機密保持などについてもしっかりと規定しておくことが求められるようになった。
社員に向き合う拠りどころ
一方で、社員の側からすると、ルールブックであるとともに、会社の社員に対するスタンスや取扱いのメッセージという位置づけとなる。
処遇や取扱いについては、就業規則に記載されており、それ以下も以上もなく、記載された内容で処遇される。
また、社員側の都合による休職、休業などの労働契約の不履行についても、どのような配慮をしてくれるのか、くれないのかなど、人事ポリシーが具現化されたものなのだ。
ポイントは、勤怠、服務規律、懲戒事由
就業規則には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」と定めがある場合には記載が必要となる「相対的記載事項」の二種類がある。
しっかりとした就業規則を作るとなると相当な分量となる。しかし日常の労務管理に必要なポイントとなると、そんなに多くはない。
前述の意味合いから考えると、押さえておくべきポイントはつぎの3つである。
- 勤怠
- 服務規律
- 懲戒事由
これら3点をしっかりと押さえておくことで、労務管理やトラブルの8割がたは必要な対応を判断することができる。またそれらの未然防止に向けたマネジメントがチェックするポイントも見えてくる。
まずは、読者のみなさんも、自社の就業規則の3つのポイントを再度確認してみてはいかがだろうか。