【法定雇用率が引き上がりました】
- 3月1日から法定雇用率が、2.2% ⇒ 2.3%に
- それに伴い障害者雇用義務が発生する労働者数も、45.5人以上 ⇒ 43.5人以上に
- 2020年4月施行の「特例給付金」申告がスタート
※この記事は特別な記載がない限り、民間企業について説明する
障害者雇用促進法の経緯
2018年4月の法改正により、精神障害者の雇用が義務化されたが、企業側の負担を考慮し、①激変緩和措置ならびに②経過措置が設けられた。具体的には以下のとおり。
①激変緩和措置:2018年4月1日~2023年3月31日 … 法定雇用率2.3%
②経過措置:2018年4月1日~2021年2月28日 … 法定雇用率2.2%
今回は上記②の経過措置終了を受けて法定雇用率が変更になるものである。なお、今回適用される法定雇用率2.3%は、激変緩和措置によるものであり、期間満了となる2023年3月末のタイミングで見直される可能性は高く、長期的視点に立った障害者雇用への取り組みが必要となる。
制度のおさらい
根拠法は「障害者雇用促進法」である。これは法定雇用率を定め、事業主に障害者の雇用を義務付けている。毎年6月1日現在、常用労働者を43.5人(※1)以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用する義務が発生し、かつ「障害者雇用状況報告」の提出が義務付けられる。
※1:週所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者は、1人を0.5人とカウントするため、人数は0.5人単位で変動する
法定雇用率の達成状況が著しく低い事業主に対しては、段階的に「雇入れ計画作成命令」→「雇入れ計画の適正実施勧告」→「特別指導」→「企業名公表」といった行政指導が行われる。ちなみに上記で職安に呼び出されるのは代表取締役以上となるので、当事者にもしっかりと認識してもらうことが肝心である。
この障害者雇用状況報告とは別に、「障害者雇用納付金制度」というものがある。こちらは常用労働者100人以上の事業主が対象で、毎年4月から翌年3月の1年間を期間とし、基本的に毎月1日の常用労働者数とそこから算出される法定雇用障害者数ならびに、毎月実際に雇用している障害者人数を1年分合計し、差異を計算する。
法定雇用障害者数を上回っていれば、2.7万円/人・月の調整金が支給され、下回った場合には5万円/人・月の納付金が徴収される。
これら障害者雇用状況報告ならびに障害者雇用納付金制度は、どちらも企業単位で適用され、障害者雇用状況報告は本社を管轄する職安に、障害者雇用納付金制度は高齢・障害・求職者雇用支援機構の本社を管轄する都道府県窓口に提出する。
特例給付金の申告スタート
これまで障害者雇用促進法では、人数カウントの対象とならなかった週所定労働時間が20時間未満の障害者のなかで、同10時間以上の障害者を雇用した場合、条件を満たすと「特例給付金」が支給されることとなった。
週所定労働時間が20時間以上の障害者を1人以上雇用している場合で、
常用労働者100人超の事業主:7千円/人・月
常用労働者100人以下の事業主:5千円/人・月
の特例給付金が支給される。
※週所定労働時間20時間以上の障害者雇用数が上限
※重度障害者のダブルカウントはなし
実務上の留意点
実務担当者としては以下の点を確認したい。
□6月1日時点の常用労働者が43.5人以上か
⇒障害者雇用状況報告書の提出
□障害者雇用納付金制度の対象事業主である場合
⇒今年度(2020年4月~2021年3月)の障害者雇用納付金制度の計算にあたり、2021年3月分のみ法定雇用率を2.3%で計算すること
□週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の障害者を雇用しているか
⇒該当する場合、「特例給付金」の申告が必要になる可能性あり
<参考リンク>
記入説明書(納付金・調整金関係)|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構