グローバル人事責任者会議
前々職の会社は自動車業界でしたので、わが国の産業の中でも海外進出が早い方で、2015年当時はすでに海外に30拠点以上の工場がありました。自動車は1台あたり2〜3万点という部品から構成されていて、完成車工場が進出すると一緒に部品メーカーも進出してコストや為替影響をミニマイズするという戦略がとられていました。
海外に工場を作る際には、段階的ステップを踏んでいきます。手がけていた部品の製造工程は、素材からボディや筐体などを作る「鋳造」や「成形」、作られたボディなどに穴などをあける「加工」、そしてさまざまな構成部品を取り付けて、機能するよう完成させる「組立」の3つからなります。
最初は組立ラインのみを小さな規模で立ち上げて、それより前工程は日本で作って輸出して供給します。それで会社の組織運営も含めてうまくいくと、加工工程、鋳造工程というようにステップを踏んで現地化していくのです。設備投資の大きさも前工程に行くほど大規模になるので、状況を見極めながら進めていくのには都合がよいのです。
現地で採用する人材も最初に組立工程の立ち上げメンバーを採用し、日本に半年から1年程度現場実習のために送り込み、モノづくりのノウハウをしっかりと持ち帰ってもらいます。その後、そのメンバーが中心となって、規模拡大のリーダーシップをとってもらいます。管理系もその中から適性を見て幹部として抜擢していくのがパターンでした。
どの拠点も基本的に人事や経理、情報システムなどを見る管理系はすべて製造出身の立ち上げメンバーがマネジメントを担ってくれていました。彼ら彼女らは会社のことはよく理解していますし、日本語も堪能です。しかし、肝心の人事などの専門性はほとんどなく、会社立ち上げ時にプロジェクトメンバーが日本の制度を参考にしてつくった人事制度をオペレーションするのがやっとというのが実態でした。
売上規模でも社員数でも日本より海外の方が倍以上となっていましたので、会社の競争力を上げていくためには、海外のローカル社員のレベルアップが欠かせません。一方で現地の人事メンバーのレベルは高くない、そんな課題感をもっていたのでした。
そこで、グローバルに人事の体制強化をしていこうという提案を人事企画が持ってきてくれました。具体的には、海外拠点を地域本部ごとにまとめ、地域本部ごとに本社機能として人事メンバーを配置し、担当する地域の人課題を本社と一緒になって解決していこうというものでした。
当時、地域本部は米州(含欧州 )、アジア、中国という3つに分かれていて、そのうちアジア本部には日本人の人事メンバーが配置されていました。そこで、中国とアメリカの統括会社に相談し、各々現地の人事シニアマネージャーと管理担当の日本人駐在員を人選してもらいました。
各々の地域で課題は異なることから、まずは各地域ごとに課題共有をしたうえで、具体的な支援活動に入っていきました。そんな中、せっかくなので、すべての地域の担当者が一堂に会してグループ全体での人事方針などを確認するミーティングを開催しては、という話になり、早速テレビ会議ではありましたが開催することになりました。
会議自体は2時間程度で予定調和的に終わりましたが、各地域のメンバーからの評判は上々で、現地で仕事をしているとなかなかグループ全体を意識して物事を考えることがない中、とても刺激を受けて、視座を上げることができたという感想をもらってことが印象的でした。
いつも本社で仕事をしていると各海外拠点とは等距離で話していますが、各国の横同士となると、そのようなコミュニケーションをとる機会自体があまりなく、そのような場を設定することの重要性を感じさせられたのでした。
つづく…