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人事屋修行記(第4話)

二次面接

一次面接が終わり、ボクは不安な日々を過ごしていました。緊張はしていたものの、言いたいことは一応言え、卒論の話題も内容はさておき、何とか切り抜けることができました。

 

しかし、あんな内容で果たして通過できるのか?と自分に問いかけてみると、常識的に考えて?です。そんなことを考えながら悶々と過ごしていると、会社から電話が掛かってきました。

 

「一次面接は通過しました。おめでとうございます。では引き続き二次面接を受けていただきます。がんばってくださいね。」

 

一次をなんとか通過したという嬉しさもあったのですが、それ以上に印象残ったのは、その後の事務連絡も含め、とてもあたたかな感じの対応で、しかもがんばってという応援の言葉まで掛けていただいたではありませんか。

 

他の会社の事務的かつ横柄な対応が印象に残っていたボクは、イッキに高感度アップです。

 

電話の後、落ち着いて面接の内容を思い返してみると、面接官二人の印象がとても良く、特に先輩の方は、なんかとても仕事をバリバリこなしているような印象があり、先ほどの電話の応対と相まって、二次も通過していないのに「是非、あの人たちと一緒に仕事がしたい!」とひとりで盛り上がっていました。

 

二次面接の場所に指定されたのは、当時仙台でも老舗で格式があり、昭和天皇もお泊りになったこともある仙台プラザホテルです。緊張しながら車寄せに近づいていくと、ロビーがあるのですが、ボクのような学生風情が入っていっていいものやら、といった感じの建物です。

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ロビーに入りキョロキョロしていると、一次面接をしてくれた先輩の方の担当がボクを見つけてサッと声を掛けてくれました。

 

まずは、ロビーのソファに座って交通費の精算をしていただき、終わるとすぐに会場へと案内されました。二人でエレベーターに乗り、上がっていく合間にやさしく微笑みながら緊張しているボクにいろいろ説明やアドバイスをしてくれるではありませんか。

 

「今日面接をするのは、弊社の管理担当の専務取締役です。でも君の大学の先輩だから緊張することないよ。一次面接も良かったし、あの調子でやればきっと大丈夫だと思うよ。」

 

今思うと極度に緊張したボクを見かねて、平常心を取り戻させるべく、声を掛けてくれたのだと思いますが、この一言にどれだけボクが勇気付けられたかわかりません。そんな会話をしているうちにあっという間に会場の入口に到着です。

 

「このドアの向こうに面接官がいますので、ドアをノックして返事があったら入って指示に従ってはじめてください。さあ、大丈夫ですか?それではがんばって!」

 

部屋に入ってみるとそれは生まれて初めて入るいわゆるスウィートルームでした。ホテルの部屋の中に応接室があり、そのソファに窓を背にしたいわゆる逆光で専務である面接官は座っていました。

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専務からの質問に答える形で面接は進んでいきました。会社の役員なんてどんなに偉くてコワいのだろうと思っていると、ロマンスグレーの小柄な紳士は、とても優しく、ていねな言葉使いでゆっくりと質問をしてくれ、ボクの拙い答えにもやさしくうなずいてくれました。ほのかに香る素敵な香水とそのとても品のいい感じに、なるほど役員とはこういう方がなられるのだと、思いました。

 

やがて質問も終わり、お決まりの「何か聞いておきたいことはありますか?」と訪ねられました。二次面接に進むことが決まってからというもの、何を質問しようかとずっと考えていました。でも結局会場に着くまでたいした質問は思いつきません。

 

でも、せっかく上場企業の役員という、この先もしかすると二度と話をすることがないような方と話をする機会をいただけるのであれば、その時しか聞けないことを聞こう!と考え、「御社の今後の経営戦略について、お聞かせいただきたいのですが!」ととても大きく出てみました。

 

それを聞いたところで理解ができる訳もないのですが、その専務はいやな顔もせず、ボクのそんな質問にていねいに答えてくれました。面接後、家に帰るバスの中で、やるべきことはすべてやったので、たとえダメでも悔いはないと、よくわからない達成感に満たされていたボクでした。

 

つづく…