引き合い
先月から、クライアント企業の人事制度をゼロから構築するという、大きな仕事がスタートした、というのは以前このブログにも書いた。期間は約1年2ヶ月のフルスクラッチで、店主のキャリアにとっても重要なプロジェクトだ。
毎週のように定例ミーティングが設定され、様々な準備を進めながら、いよいよ本格的に走り出したところである。
そんな矢先、今週に入って突然、1本の電話が鳴った。数年前に大きな仕事を担当させていただいたクライアントからだった。一体何事だろうか。急ぎ折り返しの連絡を入れてみると、驚くべき内容であった。
「以前お願いしていた件ですが、ようやく社内の調整が終わりまして。ぜひ、正式にお願いしたいのですが」それは、ずいぶん前に一度話が止まっていた案件だった。
その案件の見積もりを提出したのは、ちょうど1年前の1月。当時は先方も前向きだったが、「社内調整に時間がかかる」とのことで、それきり音沙汰がなくなっていた。正直なところ、もう立ち消えになったものとばかり思っていた。それが1年の時を経て、突然再始動の連絡が来たのである。

仕事の内容自体は、プロジェクト管理の代行といったもので、それほど難易度が高いわけではない。ただ、それなりに工数がかかることは間違いない。今の店主の状況は、会社を立ち上げて独立して以来、もっとも仕事量が多い状態である。
新しい仕事の依頼は、もちろん嬉しい悲鳴ではある。しかし、すでに進行中の大きなプロジェクトに加えて、果たしてこの新しい案件をきちんとこなせるかどうか。一抹の不安がないわけではない。
一方で、今回の案件はかなり特殊な内容を含んでいる。店主のようなニッチな領域で活動している人間でなければ、なかなか引き受け手が見つからないと思われる。もし断ってしまえば、クライアントはまた一から依頼先を探さなくてはならない。それは避けなければいけない。
電話口で少し話を聞くと、状況は想像していたよりもずっと切迫しているようだった。
「社内ではすでに内容が固まっていまして。できれば一部の作業は3月中に終わらせたい、という意向なんです」
3月中、つまり来月中ということである。見積もりを出してから1年も間が空いているのだから、当然、当時と今とでは状況も変わっているだろう。それを確認しないことには、安易に「やります」とは言えない。一方でずるずると話を引き延ばして、そのしわ寄せが最終的に先方の担当者にいってしまうのは本意ではない。
急いで打ち合わせをセットしてもらった。一体、どのような話が飛び出すのだろうか。1年前の計画から、何が変わり、何が変わっていないのか。期待と少しの緊張感を抱きながら、週末の打ち合わせを待つのであった。