ヒアリング
先日、仕事なかまからの紹介で、ヒアリングを受けさせてもらった。そのテーマは、彼が新たに考えを巡らせているビジネスアイデアの「フィジビリティスタディ(実現可能性調査)」の一環であった。
話を聞くと、その新規ビジネスが対象とする商売相手は「企業の人事部」とのこと。店主が長らく会社員時代に身を置いていたフィールドであり、俄然興味が湧いた。
彼は、新しい商材やサービスを企業に提供しようと企画しており、今回はそのアイデアが企業の「人事部」というターゲットの実態や、どんな課題を抱えているのか、というリアルな実態を知りたいという意図であった。
なぜ店主に声がかかったかといえば、長年会社員として人事畑を歩み、最後は部長という立場から部門全体、そして会社全体の動きを見ていた経験があるためだ。

フリーランスとして活動していると、人材育成の専門家は多いが、こと人事部門の全体戦略や組織運営まで含めて俯瞰的に見ていた経験を持つ人材は、研修講師などに比べると、まだ少ないようだ。仕事なかまからも、「そういう意味で店主の経験は貴重だ」と言われ、よくお声がけをいただいている。
ヒアリングの場では、店主は企業の人事部側の「リアルな実態」や「潜在的な課題」について、本音ベースで話をした。ざっくばらんな対話は、1時間という短い時間であったが、非常に密度が濃く、有意義な時間となった。
今回あらためて感じたのは、世の中には本当に面白い視点と切り口でビジネスを考えている人が多いということだ。
企業で働いていると、これまでの慣習や、長年にわたる仕事の積み重ねが「あたり前のやり方」となってしまいがちだ。特に人事のようなバックオフィス部門では、「これまでこれで回ってきたのだから」という意識が強く働き、その仕事の進め方やシステムの中に潜む非効率や、より良くできるはずの「課題の種」に、なかなか気づくことができない。
しかし、一歩外に出て客観的な視点を持ってみると、「ここがもっと楽になれば、従業員も人事も助かるのに」「このプロセスが自動化できれば、他のもっと価値のある仕事に時間を割けるのに」といった、いわば「かゆい所に手が届く」ような改善点が見えてくる。そして、その「当たり前」の中にこそ、新しいビジネスのチャンスが隠れているのだ。
顧客が気づいていない課題にフォーカスし、その解決を手伝う。これは、いつの時代もビジネスにおける「顧客の課題解決」という基本原則に則った、定石なのである。
ヒアリングは無事に終わり、お互いの人となりも理解できたことで、「次はぜひ食事でも」という話で盛り上がった。
店主が起業してからつくづく感じるのは、人からの「紹介」の持つ重みと価値である。私たちのような看板を持たないフリーランスにとって、自ら営業活動をして仕事を受注できるケースは稀だ。ほとんどの仕事は、友人、知人、そして「仕事なかま」からのご紹介によって成り立っている。
「この案件だったら、あの人に頼めば間違いない」と思ってもらえるよう、日々の仕事に誠実に取り組み、人との繋がりを大切にする。これが、組織という後ろ盾がないフリーランスにとって、最も重要で、最も価値のある資産なのだ。
今回も仕事なかま経由で、また新しい素敵な方との出会いと、刺激的な気づきを得ることができた。このご縁をこれからも大切に育んでいきたい。