クリティカルシンキング
店主の仕事のひとつに「人事パーソナルコーチ」という時間がある。きっかけは知人から頼まれてスタートした。
その知人は、営業職としてキャリアをスタートし、その後大手メーカーに人事職として転職し、人事企画や労組担当といったメーカー人事の中ではいわば王道といったキャリアを積んで行った。
その後、人事における数字回り、つまり給与計算や社会保険などの基礎的な知識がないと気が付き、自己啓発に付き合ってほしいというリクエストからはじまった。
人事における数字回りの仕事は、必要な知識量が多く範囲も広いため、担当者としてひとり立ちするのに時間がかかる。その割に標準化してしまえば定型業務なので、アウトソーシングしている企業も多く、経験できるチャンスも少ない。
一方で、人事領域における戦略や企画立案、制度設計といった場面になると、収益へのインパクトも重要な検討項目になってくるため、そのシミュレーションには前述の数字回りの知識は欠かせない。
転職や他職種かたの異動で人事を担当する方々の、これらの課題へフォーカスしようということで、「人事パーソナルコーチ」というセッションを続けているのだ。
きっかけとなった知人は、当初の目的はほぼ達成できたということで卒業された。その代わりにという訳ではないのだが、同じ課題を抱える同僚を担当して欲しい、というお願いをいただき、いまに至る。
その同僚の方は、大手外食チェーンで店舗からのたたき上げで、優秀と評価され管理部門の人事へ異動してきた。「現場を知らないといい仕事はできない」といった会社の人事ポリシーによっては、よくあるケースあり、クライアント企業でも同じような人事を行っている企業がある。
昨年の10月からスタートし毎週1時間セッションを続けてきた。人事の専門性についてはひととおり取り上げてきたので、将来のキャリア構築に向け、戦略立案や企画立案能力を構築したいとのリクエストをいただいた。
戦略といえば一般的にはMBAメニューである。しかし大学院はアカデミックに偏る傾向があり、専門教育機関には公開講座もあるものの、いずれも時間的、金銭的にハードルが高い。また、現在会社施策で専門教育機関のWeb講座を受講しているという。
なので、専門教育機関の市販のテキストを参考書にして、フレームワークを事前に自習でインプットした上で、各章ごとに設定されている演習問題を予習して、ディスカッションをしていくことにした。
テキストの1冊目は「クリティカルシンキング」をリクエストいただいた。実は店主も学んだことのない分野であり、とても楽しみにしながら事前準備に取り掛かる。
テキストを読み進めると、コミュニケーションの解説でその目的を「コミュニケーションを通じて相手に理解・納得、できれば共感してもらい、相手が自分が期待している行動をとってもらうこと」と書かれていた。
どこかで聞いたことのあるフレーズだと思っていたが、これは店主が長年部下に繰り返し言ってきたこととまったく同じ内容であった。
だれかの話しやアドバイス、書籍などを参考にしたわけではなく、自らの経験から定義したコミュニケーションの意味であっただけに、飛び上がるほどおどろいた。
店主の経験から導き出した定義。ちょうど帰納法の解説もあったので、まんざらではないなとひとりニヤついていたのであった。