Cafe HOUKOKU-DOH

~ホッとひと息的な読み物でブレイクするサイト~

人事屋修行記(第5話)

内定式

最終面接からしばらくして採用担当の方から電話をいただき、内々定を伝えられました。その頃、ボクは受かってもいないのに、面接をしてくれた担当の二人がとても気に入ってしまい、仕事をするのであればこの会社であの人たちと一緒に仕事がしたいと思うようになっていました。そこへ内々定の連絡をもらった訳ですから二つ返事で承諾し、就活はあっという間に終了です。まったく真剣にやっていなかったにも関わらず、それでも妙な充実感はありました。

 

1ヶ月程経ったある日、会社から電話がありました。 

「内定式を弊社の台湾にある工場で行いますので、台湾へ一緒に行ってもらいたいと思います。パスポートは持っていますか?」

当時は就職協定で8月20日より前には内定を出さない約束になっていましたので、企業は8月20日に一斉に内定式を実施していました。普通は都内のホテルなどで内定式と懇親会をやって学生を拘束していた訳ですが、中にはその時点まで内定を複数抱え、内定式も都内どおしの会社であれば時間差で複数掛け持ちで出席し、2~3月頃まで内定を引っ張って最終的に入社する会社を決める学生も結構いて、8月20日に学生をいかに拘束するかに、採用力の弱い会社は頭を痛めていました。

 

そんな中での台湾での拘束です。当時、海外旅行での内定式も流行り始めていましたが、やっているのは先物取引などの不人気企業やブラック企業がほとんどで、ボクは電話を切ってからしばらくは、この会社本当に大丈夫だろうか?とずいぶん不安に思ったりもしました。

 

8月20日は、成田空港のラウンジに集合です。初めての海外旅行とラウンジです。出発までの時間をそこで過ごしたわけですが、ゆったりとしたソファーに飲み物のサービスを受け、素直に会社ってやっぱりすごいんだと感心しました。

 

台湾に着いた日は、そのままホテルで一泊し、翌日工場に入りました。最初に工場見学をさせていただき、その後食堂ホールで内定式です。当時の現地法人の社長をしていた駐在員から内定通知を一人ひとり渡され、ありがたいお言葉をいただき、内定式は終了。近くのレストランで現地法人の社員の代表10名ほども交えての食事会となりました。

 

中華料理ですので例の円卓で食事をするわけですが、現法の社員さんたちが作業服でいるにも関わらず、紹興酒で乾杯が始まりました。台湾(中国)式は小さなグラスにテーブル全員が注ぎ、一人が乾杯の発声をして全員で一気に飲み干します。それをテーブルにいる全員が順番に発声をして人数分繰り返して乾杯をしていきます。我々はまだ学生で飲み方がわかっているわけもなく、かなり酔っ払ってしまいましたが、現法の社員たちはまったく平気な顔です。後で聞くとその後も会社に戻って普通に仕事をしていたそうです。やはり中国ビジネスはお酒が強くないとつとまりませんね。

 

その後は、南部の高雄というリゾート地のホテルに行き、3泊4日の完全な観光旅行でした。内定者20数名を台湾へ4泊5日の旅行など、なんと贅沢なと思っていましたが、入社後聞いてみると、都内のホテルで会議室+立食パーティーで一日拘束とそんなにコスト的には違わないという話に驚いた覚えがあります。それ以上に、そういう企画を考えて実行に移してしまう採用担当者のパワーのすごさに圧倒させられましたね。

 

つづく…