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HD創業日誌

人事制度説明会

先週は、クライアント企業の人事制度説明会に、オブザーバーとして同行した。全国に社員がいる企業であるため、全国の各エリアのミーティングに時間をいただき、説明、意見交換を行うというスケジュールだ。

 

手始めは月曜日の新大阪駅前から始まり、翌日は札幌に飛んで説明、その足で仙台まで戻って宿泊し、翌日に東北エリアに対する説明会を実施した。各会場1時間ほど時間をとっていただき、説明30分、質疑応答30分という形をとった。今回は最初の3エリアだけだが、今後も説明会が続き、今月いっぱいは店主も同行する予定である。

 

人事制度は、どれだけ緻密に設計されようとも、それだけではただの紙の上のルールに過ぎない。その制度が意図した効果を発揮し、社員の行動変容を促し、最終的に会社の業績向上に結びつくかどうかは、社員一人ひとりに「浸透」するかどうかにかかっている。特に、日々の仕事の中でメンバーと向き合い、実際に制度を運用していく現場の管理職が、その鍵を握っているのだ。

 

店主が会社員時代、人事制度の改定を担った際も、最も苦心したのはこの「浸透」のプロセスであった。どんなに完璧な制度を作り上げても、現場の管理職が「また面倒な仕事が増えた」という受け止め方をするのはよくあるパターンだ。

 

 

とくに、会社が大きくなればなるほど、人事部門の意図は、運用を担う管理職の主観的な解釈や、メンバーへの伝え方によって、大きく変質してしまう。人事制度が従業員の態度や行動を通じて業績につながるという設計は、管理職による運用の過程でその意図が薄れてしまう可能性が高いのだ。

 

今回のクライアント企業へのご支援では、管理職を単なる「制度の運用担当者」としてではなく、「制度を主体的に活用する現場リーダー」へと昇華させることに主眼を置いている。そのための仕掛けとして、今回のエリア別説明会では、一方的な説明ではなく、質疑応答にたっぷりと時間を取る双方向の対話を重視した。管理職の方々が抱える疑問や懸念をその場で解消し、制度の設計思想を深く理解してもらうことが目的である。

 

店主が前職の化学メーカーにいたころ、管理職に求められる能力を明確にするため、アセスメントセンター方式という昇格試験を導入した経験がある。当時の課題は、管理職全体が「戦略性に欠け、目先の仕事に追われている」ことであった。制度の評価項目を公開することで、部課長に求められる能力を明確にし、能力開発を促そうとしたのだ。これもまた、管理職を「パートナー」として捉え、自律的な成長を促すための「浸透の仕掛け」の一つだったと言える。

 

今回の説明会への同行は、施策導入前のていねいなコミュニケーションの場であり、管理職が制度を自分ごととして捉えるための、重要な第一歩なのだ。

 

これからの人事の役割は、制度の「設計者」から、組織内のコミュニケーションを活性化し、「浸透の仕掛け人」へとシフトすることが求められている。浸透のプロセスを主体的にマネジメントできるかどうかが、施策が業績向上に結びつくか否かを分けるのだ。

 

日々現場でメンバーと顔を合わせ、実際に制度を運用していく管理職が主体的に「自分ごと」として制度を運用していくように仕掛けていくこと。このあたり前を、あらためて考えさせられた一週間であった。