Cafe HOUKOKU-DOH

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人事屋修行記(第29話)

現金支給

いまクライアントさんの1社では、クラウド型人事系システム更新のための準備を進めています。店主も何度か話を聴かせてもらいましたが、あらためて隔世の感がしています。

 

店主が給与計算の担当になった入社当時は、全社で従業員約2千人。神奈川の川崎と新宿本社、宮城の工場の3ヶ所で場所ごとに給与計算をしていました。担当していた川崎

 

工場は従業員約4百人でその他に契約社員と呼ばれるパート、フルタイム、アルバイトが約2百人いました。

 

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その6百人のうち、給与を現金で支給していたのは、正社員で約百人弱、契約社員はOAカルク(オフコン表計算システム)で手計算していたので、全員を現金で支給していました。

 

毎月、給与計算がしまると会計伝票を起票する前に、金種表を作って経理に渡します。もはや金種表を見たり、作ったりしたことの読者はごくわずかとなってしまったような気がしますが、要するに経理が現金を出納する際に、ただ単に起票された金額の総額を現金で用意すればいいのではなく、3百人分の給与、一人ひとりの支給額の合計が出納の金額ですので、一人ひとりの支給額に合わせた現金の種類が必要なわけです。

 

経理は金種表に基づいて、銀行に出金依頼をしておき、支給日当日の朝一番、武蔵小杉の横浜銀行経理の担当者と2人で現金を受け取りに行きます。だいたい3~4千万円の現金を真っ白い上下の作業服(会社の外ではとても目立ちます)を着た社員が2人で取りに行くのですから、知る人が知れば、今考えるとイイカモだったような気がします。

 

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会社に戻ると経理の金庫に一旦しまっておき、午後一番から現金の袋詰めが始まります。担当は店主と先輩の女性の2人。午後1時からスタートして4時には、現場の庶務担当が取りに来ますので、それまでには作業を終えなければなりません。

 

給与明細は、明細用紙ではなく、専用に作られた明細書で封筒状になっていて、それを開くと内側に明細が印字されているというものでした。現金支給を前提に作られていて、封筒の封の部分は糊付けがされていて、シールをはがして封をする仕組みになっています。また、封の内側には金種が印字されていて、その金種を見ながら現金を数えて入れていきます。

 

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給与計算をきちんと間違いなく行ったとしても、現金の袋詰めを間違えてしまえばそれで終わりです。ですので、作業には細心の注意を払うとともに、間違えが起きない、起こりえない手順で進めていきます。

 

一人ひとりの現金を数えて、その金額にしたら、もう一度金額を数え、袋に入れます。袋の封はぜずにとりあえず置いておき、全員分をその手順で数えて入れていきます。全員分の支給金額と金種の合計が、銀行にお願いした金種と一致していますから、全員分を詰め終わった段階で、現金がピッタリあっていればOK、足りなかったり余ったりすれば、誰かの分が間違っているということになります。

 

普通に作業をしていって、3百人全員分を詰め終わるのが3時頃です。ピッタリ合えばあとは封をするだけですので簡単ですが、合わなかったときは、そこから戦場のようになります。とりあえず、全員分を再度チェックするのですが、1人だけ違っているのであれば、その1人が見つかればOKとなります。

 

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しかし複数名を間違っていたりすると、ほとんど全員分をチェックしなければいけませので、これは大騒ぎです。たまには、4時までに間に合わず、明細を取りに来た現場の庶務担当者の手も借りて、チェックしたこともありました。それでも遅くても4時半前には必ず渡すことができました。なぜなら、パートタイムの人もいて、4時半あがりの人に給与袋を渡さなければならなかったのです。

 

現金の袋詰めを通して、給与計算の基本である「間違えを起こさない仕組み」を覚え、それを他の業務にも自分で考えて仕組み化していくノウハウを身に付けることができたと思います。今振返ると仕事の原点ですね。

 

つづく…