レイヤード
アイビー的着こなしのひとつに「レイヤード」重ね着というワザがある。寒さが厳しくなってくるこの時期ならではの洋服の楽しみ方である。
B.D.シャツにクルーネックセーターやカーディガンなどは、一般的なレイヤードであるが、(重ね着という感覚も特段持たないと思うが)一般的にはあまり組み合わせないようなレイヤードをするのがアイビー的なのである。
店主がよく好んでやるのが、B.D.シャツにブレザーを羽織る場合、少し寒いかと思えば、セーターやトレーナーっていうのが一般的だと思う。そこをあえてフロントジップ式のパーカーをあわせるのだ。
よりオシャレコーデや気合いを示すためには、B.D.シャツにはボウタイやレジメンタルタイをあわせて、タイドアップのドレスさとパーカーのカジュアルさのギャップを楽しんだりする。
ドレスとカジュアルのギャップを楽しむパターンはほかにもある。コーデュロイのスーツという、すでに素材の段階でちょっとくずしたスーツにB.D.シャツまでは普通のチョイスだが、ノータイやタイドアップするのではなく、B.D.シャツのインナーにタートルネックのセーターをあわせるのだ。
このコーデによってノータイの寒々さやタイドアップの固さなどがなくなり、季節らしいあたたかな感じと程よいカジュアル感を出せるのだ。
ヘビーデューティーアイビーでもレイヤーは取り入れられている。シェラデザインのマウンテンパーカーの鉄板コーデでは、ネルシャツと呼ばれるブランネル素材のシャツの上に、未脱脂ウールを使ったオイルド・セーターをあわせ、その上にダウンベストを着込んで、そのうえにマウンテンパーカーを羽織るのだ。
マウンテンパーカーの薄い素材の中に、ダウンベストやセーター、ネルシャツを着込むという、通常のレイヤーとは反対の重ね方である。
アイビーリーグの学生たちは、米国のエリート集団である。彼らの服装への基本スタンスは、質実剛健、合理的なものを好んだようだ。ワードローブに機能性最優先の軍隊採用品が多く入っていたり、ヘビーデューティーなどのアウトドアギアが好まれるのもそれを物語る。
レイヤードもその現われで、持っているアイテムを組合せることで、少ないアイテムでも工夫して着こなしの幅を広げたのであろう。彼らはわが国でいういわば「バンカラファッション」なのである。
このようなスピリットのなか、合理的で機能性の高いアイテムをチョイスしつつ、TPOにあわせた服装術を身につけて、米国のリーダー層で活躍していったのである。