経営アセスメント
昨年の部長昇進一年目には、昇進試験の候補に選ばれなかったので、今年は声がかかるかと、期待半分、不安半分で毎日を過ごしていました。人事の立場としては昇進試験というものは実に微妙で、チャレンジして実力を試してみたい一方で、事務局は部下であり、能力が定量化され、可視化されてしまうのです。
いつもは上司の立場で、えらそうなコメントを出している立場として、その能力が定量的に可視化されるというのは、いままでの仕事の信頼性のすべてに関わります。しかし逃げるわけには行きませんので、日頃からしっかりと準備をしていくしかありません。
部長層への昇進試験として行われる外部アセスメントは、4つの演習を通じて、19種類のディメンションといわれる能力を評価していくものでした。その能力の発揮度合いを、部長という経営者候補レベルとして、どの程度なのかを評価し、数値化していくのです。
店主の場合、1年前に幹部研修に選ばれ、全社から選抜された若手部課長と経営課題解決に向けたアクションラーニングプログラムに参加していたことは、大きな強みでした。
実際の自社の経営課題に正面から向き合って、実際の経営者ですら正解かどうかわからない課題に半年間取り組んだことで、たくさんの気付きを得ることができました。
しかし、それだけでは心配でしたので、春頃からMBAのケーススタディを2冊ほど買い込んで、取り組んで行きました。実際の経営判断では、テンプレートを使った分析やロジックの組立ては、事前準備に過ぎず、それをベースとした自分なりのストーリーをいかに組み立てて実行していき、つねにPDCAを回しながら方向修正をしていくのが大事だと考えています。
一方で、アセスメントは演習課題でその能力を評価するものですので、PDCAの手前までのストーリー作りとその実行性の確からしさが、ひとつのポイントだと考えました。
また、これは人事としての役得の部分ですが、戦略策定の演習では、テンプレートなどを用いた分析に資料の8割を割いてしまい、肝心な戦略実行の施策は2割というパターンの参加者が非常に多く、そこらへんも気をつけるポイントとして、参考書に取り組んでいました。
アセスメント演習当日は、店主の部下の人事課長と担当者、上司の管理本部長、それから幹部研修で同じグループだった生産企画室長が社内アセッサーとして参加しており、身内の視線の中で、3日間の演習課題に取り組むことになりました。
演習に取り組むときにいちばん気をつけたのは、とにかく審査や演習と考えず、演習課題の設定人物になりきって、実際の仕事の場面だったらどのように意思決定したり、振舞ったりするかという自分を出すことに徹するということでした。演習ということを意識してしまうと、カッコを付けたり、最後のところでまあいいか、となったりするものです。
先輩のアドバイスもあり、人事という立場もあり、3日間のアセスメント中は、休憩時間や終了後も参加者の輪に入ることもせず、ひたすら演習課題のことのみ考え抜きました。
本気の集中力というのは、ときにいつも以上の力を与えてくれるものです。戦略策定の演習課題では、自分なりに納得のいく、ロジックが成り立つストーリーを組み立てられる手段にたどりつけることができました。
2泊3日のアセスメント中、集中しっぱなしで、終わったときには疲れ果てていましたが、自分としてはやりきったという達成感はあり、あとは結果を待つのみという気分で蔵王の麓にあるリゾートホテルを後にしたのでした。
つづく…