6-9.「問題」と「課題」
一般の社会では、「問題」と「課題」について、とくに意識して使い分けはしないと思います。しかし品質管理の領域においては、「問題」と「課題」をきちんと使い分けをします。この考え方も仕事をすすめて行ったり、課題達成や問題解決をするのに考え方が整理され、対応なども検討しやすくなりますので、みていくことにしましょう。
「問題」とは、定常業務などでマニュアル(作業標準)で定めた項目が定められた範囲内におさまらず、逸脱した状態のときに、あるべき水準と現状との差のことを指します。
「課題」とは、現状の「あるべき水準」と、いまは届かないレベルだけどこういう状態になることがベストであるという「ありたき姿」の差を指します。
問題が起こると正常な状態ではないので、すぐに原因を突き止め問題を解決します。問題は放っておくとさらに悪い状態になってゆき、結果的に品質不良などが発生したり、誤った数値で決算したりとお客さまに迷惑がかかります。
一方課題については、すぐに解決しなくてもなにか不具合が起きることはありませんが、企業が成長していくには事業計画に基づき課題を設定して施策を打って達成し、体質を強くしていかなければなりません。
もうひとつ、気をつけたいポイントがあります。それは問題と課題は区別して別々の施策を打つ必要があるということです。たとえば、いつもラッシュ時間帯にダイヤどおりに目的地に到着しない鉄道路線があったとします。
この会社の役員たちは、お客さまからのダイヤどおりに目的地に着かないというクレームに対し、スピードの出る高性能車両を導入して、もっと早く目 的地に着くようにすればダイヤ遅れが解消されるどころか所要時間も短くなるので一石二鳥でお客さんは喜んでくれるだろう、という施策を打つことにしました。さて、この結果はどうなったでしょう。
読者のみなさんはすぐにわかりますよね。高性能車両を導入したので、理論上の所要時間は短縮されました。そこでダイヤもそれに合わせて書き換えました。しかし、そのほかには施策を打たなかったので、ダイヤどおりに目的地に着かないという問題は解決しませんでした。
この例では、「ダイヤどおりに着かない」が問題、「早く目的地に着く」は課題です。電車のスピードがあがったところで、そもそものダイヤどおりに着かない原因を取り除かなければ、スピードが出る車輛を走らせてもダメですよね。
しかし職場では問題を解決するのに、ありたき姿を描いてしまいイッキに課題まで達成しようとする施策が結構考え出されるのです。これは問題と課題をしっかり区別しないことが原因です。この考え方はしっかりと身につけて使えるようにしておいてください。