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人事屋修行記(第182話)

指名報酬委員会

転職先の化学メーカーは、大手電機メーカーからスピンアウトした会社の生い立ちもあり、再上場後はガバナンスにかなり力を入れていた。

 

取締役会も社内3名、社外4名で構成されており、社外取も独立性の高い専門家を招聘していて、よくあるお友だち人事とは無縁の人選であった。

 

機関設計は当時は監査役会設置会社ではあったが、取締役会は活発な議論が行われており、取締役会の活性化に向けたさまざまな取り組みをすすめて行こうといった雰囲気がとても強かった。

 

その光景は、大手自動車メーカー傘下の系列部品メーカーにいた店主から見ると、まるでガバナンス強化の先進事例を紹介するセミナーなどで取り上げられる企業事例のようであり、数年ごとに南青山から社長がやってくる会社とは隔世の感があった。

 

当時、社外取の提案で「任意の指名報酬委員会」を立ち上げている最中であった。担当していたのは、上場企業未経験である店主の部下が、モノの本などを参考にしながら見様見真似で検討していた。

 

 

当然、上司である店主もそのミッションに参加せよ!という話になったのだが、前述のとおり上場会社といえども、体裁だけを整えていたガバナンスしか経験したことがなく、イチから勉強し始める必要があった。

 

それでもモノの本を参考にしながら、指名委員会については、立ち上げに必要なTODOリストと、立ち上げ後の運営フローについて、自分でもまあまあイイ感じのものを作ることができた。

 

その上で、この会社の社長についての人材要件定義と、それを決めた上でのサクセッション対象者である役員へのアセスメントをコンサル会社にお願いして立ち上げ準備をすすめていった。

 

アセスメントの結果を踏まえ、対象者自身が能力開発プランを検討し、上司である社長と話し合いを行い決定する。それを毎年の評価と一緒に振り返り、指名委員会で検討していくフローを構築することができた。

 

このフローの運用がスタートした直後、社外取から「サクセッション候補者の人となりを知りたいので、意見交換する場を設けて欲しい」というリクエストをいただいた。

 

なにぶんはじめてのことであり、こんなイベントは参考書にも書いていないので、イチから自分たちで企画することに。部下には大手電機メーカーで会長の秘書&渉外担当として、業界団体のイベントなどへの参加経験が豊富なメンバーがおり、彼女の意見なども参考に内容を詰めていった。

 

こうして手作り感満載の任意の指名報酬委員会ではあったが、目的である企業価値の持続的向上における最重要項目である、後継者育成という未経験の分野にどっぷりとつかっていくのであった。