8-15.これからのワークライフバランス
ワークライフバランスという言葉が登場して久しいですが、この言葉の意味について、もう一度考えてみたいと思います。広辞苑によれば、「仕事と家庭・市民生活とを両立・調和させること」と定義されています。
両立、調和ということですから、その比率についてはとくに定めがありません。その人のあるべき比率で両立、調和をはかるということです。
この言葉が登場したころは、職場における人の属性というのは、日本人の男性で仕事のためなら急な残業や休日出勤、転勤などもいとわない、いわゆる「労働力供給の柔軟性がきわめて高い」人々が主流でした。その結果ワークライフバランスというのは、ワークの比率を下げて、ライフをあげましょうというメッセージが強かったのでした。
最近の働き方改革の流れでわが国の職場は、労働力供給の柔軟性に制約がある人も積極的に受け入れて活躍してもらおう、という方向に急激に舵を切りつつあります。その結果職場のすべての属性の人々が柔軟な働き方を享受できるようになりました。
このような状況になってくるとワークライフバランスの意味も以前とは変わってきています。「ワークとライフの比率は人それぞれ違う、と同時にその人のキャリアにおける時間軸によっても変化していくものである」というのが最近の主流です。
要するにキャリア形成とライフイベントをトータルで考え、キャリアの柱となる専門性を獲得する時期には、集中的にワークに多くの時間を割き、ライフイベントはその状況を踏まえながらタイミングを決めていきます。結婚、出産、子育てといった時期は必然的にライフの比率が高まります。子育てがひと段落してからは、さて? 人生100年時代、これからどうしていこうといったようにあたらしいフェーズに入っていく。
このようにワークとライフは二者択一なものから、自分のキャリアにあわせてコントロールしていくものというように考え方が変化してきています。
このような環境を上手に使って、キャリアの柱をしっかりと確立し、その人ならではのライフスタイルとキャリアを歩んで行ってほしいと思います。