Cafe HOUKOKU-DOH

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人事屋修行記(第191話)

2020年

2020年は店主にとってターニングポイントとなる年であった。前年度末に中国で謎のウイルスが出現したとの報道は聞いていたが、それがまさかあのような大きく深刻な事態になるなどということは、その時点では世界中の誰も予想していない、そういった時期であった。

 

この年は新社長の2期目の年であり、新たな中期計画のスタート年度ということで、各部門とも戦略立案にいそがしい時期だった。

 

人事も体質改善に向けたリソースシフトや、国内外の製造拠点を対象とした構造改革、そして役員の世代交代に伴う、戦略実行を確実に行うためのグローバルタレントや経営企画担当など役員クラスの採用と、戦略検討と準備のための実務が並行に走っていた。

 

そんな中、謎のウイルスはどんどん広がりを見せていった。2月になると近所の横浜港にクルーズ船が長期停泊することになり、コロナに感染した乗客への対応という、これまでに経験したことのないような状況が報道され、毎日テレビのニュースを食い入るように見ていた。

 

会社では当初、物流の停滞による製品供給などを心配事項として検討していた。それがだんだん日本国内の感染者の増加という事態に対し、工場における生産をいかに継続し、供給責任を果たしていくか、ということに焦点が移っていった。

 

当時会社ではMicrosoftのTeamsを導入し、全社で使っていこうという施策がスタートした時期であった。当時は社内のメンバーと連絡を取り合うのにふつうにメールを使っていたので、Teamsを導入してもチャットへの切り替えが進んでいなかった。

 

 

そこで店主はメンバーに号令をかけ、これから社内メンバー同士のコミュニケーションはすべてTeamsのチャットで行うと宣言した。こういったツールはトップダウンで切り替えを行っていかないと浸透しないということは過去の経験から学んでいたので、部長という立場を使って力技で切り替えていった。

 

Teamsにはビデオ会議の機能もあり、またプロジェクトごとに資料の共有やそれを使った編集作業なども行えるため、イッキにシフトしたほうが効率的になるという判断であった。

 

3月になると、国内の生産維持を最優先するという目的で、緊急事態宣言が社内に出され、自宅でのリモートワークをデフォルトにするということになり、店主も夫婦2人とも自宅でリモートワークが日常となっていった。

 

リビングで一緒にリモートワークをするわけにもいかず、そしてまずは形からという性格上、物置に使っていた1室を片付け、そこを仕事部屋にすることに。使っていなかったテレビを引っ張り出しサブモニター代わりにするなど環境整備をして行ったのだ。

 

そうして物置を片付けた狭い小部屋に毎日こもって仕事をする日々がスタートしたのであった。