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人事屋修行記(第192話)

戦略人事 vs オペレーション人事

グローバル人事推進室を立ち上げて約1年。担当する範囲はかなり広くなっていった。グローバル人事とは言いながら、社長以下役員のサクセッションプランス、さらにそれに続く次世代人材のサクセッション、取締役会の活性化や新たな事業展開に向けた専門人材のグローバルレベルでの採用、さらに事業戦略にリンクした制度の見直しなど、オペレーション人事が自認する分掌からはみ出す仕事はすべて担当する状況であった。

 

中でもヘビーであったのは、事業戦略達成のためのタレントの採用であった。社長のビジネス仲間で米国在住のエンジニア出身のタレントを、米国在住のまま日本法人の仕事をしてもらうという、曲芸に近いような採用と制度設計など、すべて新規に立ち上げていった。

 

さらに執行役員レベルの幹部級の採用も並行して走らせた。候補者は国内に留まらず、海外駐在中の人物もおり、Webでのカジュアル面談なども毎度であった。

 

さらに次の中期経営計画のスタートに向け、その計画の実効性を人・組織面から担保するために、人事戦略を描き、提案していく。そんな重たいミッションも担当していた。

 

さらに、コーポレートガバナンスの優等生でありたいという経営陣の想いから、取締役会の活性化を目指し、任意の指名報酬委員会などを立ち上げ、社外取と定期的に議論を深め、ガバナンスを強化していった。この仕切りについても担当させていただいた。

 

 

これらミッションの中には、オペレーション人事が担うべきものもたくさん含まれていたので、勝手にすすめてはまずいだろうと、オペレーション部隊の部長以下メンバーに声をかけ、相談したり参画を促したりした。

 

しかし、まるで貝が硬く殻を閉ざしたように、彼ら彼女らは国内に働く社員のみを相手に、決められたことを決められたとおり、黙々と作業をこなすことだけに集中した。それ以外のテーマやミッションには関心がないどころか、完全に拒絶してしまうのであった。

 

オペレーション人事が「人事のための人事」ばかりやっていて、戦略人事に転換できないとは、当時からよく聞く話であった。しかし、まさか自分の会社がそういう課題に直面し、さらに同じ社内にもうひとつ戦略人事だけを担当する部門を作ってしまったために、国内人事vsグローバル人事のような対立構造ができ上がってしまったのだ。

 

人事が2つに分かれてしまい、コミュニケーションの分断が起きるとは、思いも寄らない事態であった。お察しのとおり、この状況でそう簡単に仕事がすすむわけがない。

 

とはいえ課題は山積みであり、オペレーション人事メンバーを横目に見ながら、経営陣からのたくさんのオーダーをなんとか取りこぼさないように奮闘する日々であった。