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気持ちのマネジメント(第16回)

マネージャーが「自分のことで精一杯」なのはなぜか

職場で、いつも忙しそうに走り回っている上司。部下としては「手伝いましょうか?」と声をかけたいけれど、デスクにはおらず、会議の合間に一瞬戻ってきても、話しかける隙もない。朝は誰よりも早く来て、気づけば夜遅くまで一人で残っている。そんな状況になっていないだろうか。

 

部下から見れば、自分たちは与えられた役割を果たしているのに、なぜか上司だけがいつも時間に追われているように見える。「言ってくれれば手伝うのに」「何か自分にできることはないか」。そう思っている部下は少なくないはずだ。しかし、当のマネージャー本人がいっぱいいっぱいで、その思いを受け止める余裕すらない。このすれ違いは、組織にとって大きな損失を生む負のスパイラルの入り口かもしれない。

 

そもそも、マネージャーの役割とは何だろうか。思い出してみてほしい。それは大きく4つに整理できる。仕事の側面で言えば「仕事の管理」と「仕事の改善」。人の側面で言えば「職場の人間関係の構築」と「部下の育成」だ。

 

ここでとくに重要なのは、これら4つが単に並列しているわけではないという点である。「仕事の管理」「仕事の改善」「人間関係の構築」という他の3つの要素は、すべて「部下の育成」という一点に集約されるようにデザインされている。つまり、マネージャーの最も重要なミッションは、日々のマネジメント活動を通じて部下を育てることなのだ。

 

 

部下が育てば、彼ら彼女らはより高度な仕事に挑戦できるようになる。それは、あなたが抱えている仕事を、少しずつ肩代わりしてくれるようになることを意味する。部下は新しい仕事を通じて成長を実感し、それが評価につながれば、さらにモチベーションを高めるだろう。この好循環を生み出すことこそ、マネージャーに課せられたミッションである。

 

しかし、目先の業務に追われるあまり、この「部下を育成する」という長期的視点を忘れがちになる。「そんな時間はどこにもない」という悲鳴が聞こえてきそうだ。だが、その時間を作らない限り、状況は悪化の一途をたどる。

 

部下を育てる計画がなければ、具体的な仕事を通じた育成はできない。部下が成長しなければ、いつまで経ってもマネージャーの仕事は減らない。結果、マネージャーはますます自分のことで手一杯になる。これが、多くの職場が陥る「負のスパイラル」の正体だ。

 

部下は成長したいと願っている。新しい仕事にチャレンジし、できることを増やしたいと考えている。しかし、肝心のマネージャーが自分のことで精一杯で、成長の機会を与えてくれる気配が全く見えなければ、さてどう思うだろうか。次第に諦めの気持ちが芽生え、仕事への情熱を失っていく。「静かなる退職」を選ぶか、あるいは本当に退職届を提出するかのどちらかだ。

 

そうなる前に、マネージャーは一度立ち止まる必要がある。マネージャー自身が、自分と部門の仕事をきちんと整理し、少なくとも半年、できれば一年単位の計画を立てるべきだ。仕事の基本に立ち返り、計画的に業務を進める。そうして初めて、どこに無駄な時間があるかが見えてくるし、新たな時間を生み出すことも可能になる。

 

もし、あなたが「自分のことで精一杯だ」と感じているマネージャーなら、一度、丸一日だけでも時間を作ってみてはどうだろうか。半年後、一年後、自分の組織とメンバーがどうなっていてほしいか。その理想の姿から逆算し、今何をすべきかを考える。そのための時間を確保することこそが、負のスパイラルを断ち切り、組織を成長させるための、もっとも確実で重要な第一歩ではないだろうか。