部下との間に壁をつくる「忙しいふり」
「ちょっといいですか」会議の合間、息つく間もなくデスクに戻ったあなたに、部下が遠慮がちに声をかけてきた。次の会議まであと5分。PCを開き、資料に目を通しながら「ごめん、また後で」とだけ告げて、再び席を立った。
よくある光景だ。マネジメントの仕事は、自分のタスクに加え、部下の管理も含まれる。正直、猫の手も借りたいほど忙しい。だから、つい「話しかけるなオーラ」を出してしまう。眉間にしわを寄せ、PC画面に集中する。そうすれば、周囲も察してくれるだろうと。でも、本当にそれでいいのだろうか。
部下だって、あなたが忙しいことは百も承知のはずだ。それでも声をかけてくるのは、彼ら彼女らなりに切羽詰まった理由があるからに他ならない。
おそらく、あなたのスケジュールを何度も確認し、「このタイミングしかない」と待ち構えていたのだろう。朝から、あるいは何時間も前から、その一瞬のために。あなたが「後で」と切り捨てたその一言で、彼ら彼女らの仕事は完全にストップしてしまう。あなたとのコミュニケーションが仕事を堰き止めるダムになっているのだ。

あなたが新人だった頃を思い出して欲しい。先輩や上司はいつも忙しそうで、簡単な質問ひとつするのにも、ひどく気を遣った。タイミングを計っているうちに、あっという間に半日、1日が過ぎてしまう。結局、何も進められずに自己嫌悪に陥った経験は、誰にでもあるのではないだろうか。
部下は、かつてのあなた自身なのだ。そう思うと、自分の振る舞いはどう見えているのだろうか?
マネジメントのもっとも重要な仕事は、部下に成果を上げてもらうことだ。部下が成果を出すことで成長し、チーム全体のパフォーマンスが向上する。そして、部下に仕事を任せられるようになれば、あなた自身もよりレベルの高い仕事に挑戦できる。良い循環が生まれる。
にも関わらず自ら壁を作り、部下を遠ざける。「忙しい」という鎧をまとい、彼ら彼女らが助けを求める声を無視している。こうした態度は、部下に驚くほど敏感に伝わる。そして、それが続けば、いつしか上司と部下の間には分厚い壁ができ、信頼関係は静かに崩れていく。
本当に、部下の話を聴く30秒すらないのだろうか。いや、あるはずだ。どんなに忙しくても、手を止めて「どうした?」とひと言声をかけるくらいの時間は作れる。たとえその場で解決できなくても、「次の会議が終わったら、15:00から話そうか」と具体的な時間を示すだけで、部下の安心感はまったく違ってくる。
忙しいのは事実だ。しかし、その忙しさを理由に、部下との間に見えない壁を築いてはならない。彼ら彼女らがいつでも気軽に相談できる雰囲気を作ることこそ、マネジメントの原点であり、チームを成功に導く唯一の道なのだ。
明日からは、どんなに忙しくても、部下から声がかかったら一度PCから顔を上げよう。そして、まずは彼ら彼女らの目を見て、話を聴くことから始めたい。その小さな変化が、チームを変えるきっかけになるのではないだろうか。