二以上事業所勤務届
今年の秋からこれまで非常勤監査役をお願いされていた採用支援コンサル企業から、常勤取締役をお願いされ、お引き受けすることにさせていただいた。
そこで手続きが必要になったのが社会保険。社員が健保や厚生年金などに加入しなければいけない会社などを社会保険の用語で「適用事業所」という。複数の適用事業所に勤務する場合、手続きが必要だ。
役員は企業に使用されている人(雇用契約)ではないのだが、社会保険では加入の対象になる。ただし、非常勤の場合には対象外。なので今回手続きが必要になったのだ。
店主はこれまで所属していた企業やクライアント企業でも、本格的な兼業・副業などを扱った経験がなく、取締役をお受けするにあたり、ここらへんの取扱いについて調べてみた。
結論から言うと、複数の適用事業所で社員や常勤取締役として働く場合には、その両方の社会保険に加入することになる。健康保険、介護保険ならびに厚生年金保険すべてである。
加入が必要な事業所すべてで、通常どおり資格取得の手続きをしたうえで、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所に提出する。その際、健保については複数健保にまたがる場合があるので、加入者本人が選択した事業所を管轄する健保の保険証を使う。
保険料については、それぞれの事業所における報酬金額をすべて合算して標準報酬月額を決定し、それに基づく保険料をそれぞれの事業所で受け取る報酬金額で案分し、各事業所の報酬から控除する。会社負担分も同様である。
保険料決定の仕組みならびに負担の方法は、理にかなったものなのだが、その手続きと徴収事務手続きについては、かなり企業側の負担が大きいと感じた。
今回提出した「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」。e-Govという行政手続きの電子申請ポータルから行ったのだが、申請から処理完了まで約1ケ月、その後決定通知書が郵送で到着するまで10日かかった。
さらに加入者自身が受け取った通知書と選択しなかった健保の保険証を送り、そこから選択しなかった健保の保険料精算事務手続きを行うという。資格取得以降は、各事業所で支払われる報酬に基づき、保険料が徴収されているので、一部重複しており、さかのぼって精算が必要となるのだ。
国が旗振りして兼業・副業を推し進めている最中である。この手続きの煩雑さと遅さはなんとかならないものだろうか。
9月下旬の加入に対しすでに12月である。このペースで行くとおそらく社会保険料の調整は年明け1月以降になるであろう。今年の年末調整にも間に合わない。
AIがこれだけ進化している世の中である。単純な社会保険料の案分計算と控除金額への反映、通知など、ネットワークと電子申請システムを使ってタイムリーに行ってほしいものである。