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気持ちのマネジメント(第11回)

時代や世代が変わっても「人」の本質は変わらない

「今どきの若者は…」という言葉を、わたしたちは何度耳にしてきただろうか。新しい世代が登場するたびに繰り返される、まるで風物詩のようなフレーズだ。メディアもこぞって世代間のギャップを取り上げる。しかし、本当にそんなに違うのだろうか。

 

どんな世代であれ、嬉しいものは嬉しいし、悲しいことは悲しい。腹が立つときは、やっぱり腹が立つ。こうした感情の根っこにある人間の本質は、時代が変わってもそう簡単には変わらない。人生経験の差によって、感情の表し方や受け止め方に違いは出るかもしれないが、根本は同じだ。

 

この普遍的な人の心をどう捉えるか。これは、特に人をまとめる立場にある人にとって、いつの時代も変わらない重要なテーマである。

 

歴史に学ぶことは多い。例えば、戦国時代の武将、豊臣秀吉。彼は「人たらし」と呼ばれるほど、人の心を掴むのがうまかったと言われる。その人心掌握術は、現代のマネジメントにも通じるヒントに満ちている。

 

特に有名なのが、水軍の将であった九鬼嘉隆(くきよしたか)とのエピソードだ。1584年、嘉隆は蟹江城の戦いで敗走し、面目ない思いで秀吉のもとへ戻ってきた。自らの失敗を深く詫び、厳しい叱責を覚悟していたに違いない。

 

しかし、秀吉の反応は予想外のものだった。「撤退するのさえ難しい戦場で、よくぞ無事に戻ってきてくれた。これこそが何よりの手柄だ」。秀吉は嘉隆を一切非難せず、むしろその生還を称賛したのだ。

 

 

失敗の責任を問われると思っていた嘉隆にとって、この言葉はどれほど心に響いただろうか。秀吉は、戦いの勝敗という目先の結果ではなく、「無事に帰還した」というもっとも大切な事実を評価した。この寛大な処置と細やかな気遣いに深く感激した嘉隆は、生涯にわたって秀吉に忠誠を誓ったと言われている。400年以上も前の話だが、現代の職場に置き換えてもまったく違和感がないことに驚かされる。

 

このエピソードが教えてくれるのは、マネジメントにおいてもっとも大切なことの一つだ。それは、自分の言動が相手に「どう伝わり、どういう気持ちにさせたか」を想像すること。

 

わたしたちたちはつい、自分の「正しさ」を基準に行動してしまいがちだ。「良かれと思って言ったのに」「正しいことを指導したはずなのに」。そう感じた経験は誰にでもあるだろう。しかし、重要なのはこちらの意図ではない。その言葉や行動を、相手がどう受け取ったか、だ。

 

マネジメントがうまくいっているかどうかを判定するのは、指示を出す側ではなく、それを受け取る側の部下なのである。部下が「この人の下で頑張りたい」と感じるか、「もうこの人とは仕事をしたくない」と感じるか。その分かれ目は、日々のコミュニケーションの中で、相手の気持ちにどれだけ寄り添えているかにかかっている。

 

部下がミスをした時、頭ごなしに叱責するのではなく、まずは「大変だったな」と声をかける。プレッシャーのかかる仕事をやり遂げた時には、そのプロセスを労う。そんな小さな配慮の積み重ねが、信頼関係を築き、チームの力を最大限に引き出す鍵となる。

 

時代や世代という便利な言葉で人を区切る前に、目の前にいる一人の人間として相手を見つめ、その気持ちを想像してみる。秀吉が実践した「気持ちのマネジメント」は、テクノロジーがどれだけ進化しても変わらない、人間関係の原点を教えてくれている。