継続投資教育
先日、仕事のパートナーから一通の案内が届いた。店主が導入を支援したクライアント企業の社員向けに行う「継続投資教育」のお知らせだ。企業型DC(企業型確定拠出年金)を導入した企業は、毎年こうした投資教育を行うことが義務付けられている。
企業型DCは、会社が用意してくれた退職金制度の枠組みの中で、社員が自ら金融商品を選んで運用する仕組みだ。だからこそ、社員一人ひとりが金融リテラシーを高め、正しい知識を身につけて投資に臨む必要がある。
ここ10年ほど、国は国民の投資を積極的に後押ししてきた。新しいNISA制度はその代表例だろう。企業型DCもその流れの一つだ。なぜ国はそこまでして、僕らに投資をさせたいのだろうか。
日本は欧米に比べ、余裕資金を投資に回す人の割合が極端に少ない。そのほとんどが預貯金に眠っている。これは「投資=ギャンブルで大損するもの」という、根強いマイナスイメージが原因かもしれない。
一方で、投資大国アメリカでは、多くの人が当たり前のように投資をしている。しかし、これには少しカラクリがある。実は、アメリカの個人投資の大部分は、企業型DCのモデルとなった『401k』のような制度を通じて、給与から半ば強制的に天引きされる形で成り立っているのだ。

国が投資を推進するのは、ちゃんとした理屈がある。経済学の原理原則から言えば、世界経済が長期的に成長し続ける限り、正しい方法で行う投資のリターンもまた増え続ける。アメリカのような国は、その投資で得た利益が消費に回り、経済をさらに成長させるという好循環を生み出している。
翻って日本では、投資に回るお金が少ない分、経済成長の原資も限られてしまう。だからこそ国は、銀行口座やタンスに眠っているお金を投資に回し、経済を活性化させたいと考えているのだ。
バブル崩壊後の約30年間、日本は「金利のない世界」を生きてきた。モノの値段は上がらず、給料も横ばい。そんな時代には、現金を持っておくことや、わずかな金利しかつかない銀行に預けておくことに、何の疑問も感じなかった。
しかし、時代は変わった。金利が復活し、物価がじわじわと上がり続ける「インフレ」の時代に突入した。このような状況で、ただ現金を持っているだけでは、物価が上がった分だけ、その価値は相対的に目減りしていく。何もしないことが、かえってリスクになるのだ。
では、「正しい投資」とは何だろうか。専門家が口を揃えて言う投資の基本原則は、「長期・積立・分散」だ。短期的な値動きを追って株式を売買するような行為は、彼らに言わせれば「投機(ギャンブル)」であり、投資とは区別される。もちろん、それを余剰資金でゲームとして楽しむことを否定はしない。ただ、それが投資のすべてだと思ってしまうと、「投資は危ない」という誤解が生まれてしまう。
真の投資とは、投資信託のような金融商品を使い、毎月コツコツと積み立てていくこと。そして、投資先を真つの国や資産に集中させず、世界中の様々なものに分散させる。これを最低でも10年、できれば20年、30年という長い時間軸で続けることこそが、王道なのだ。
この仕事を通じて、企業型DCの導入支援をする中で驚いたことがある。それは、投資に関する正しい知識を持つ社会人が、想像以上に少ないという事実だ。店主自身も、この仕事を始めて真剣に勉強するまで、知らないことばかりだったのだから、無理もないのかもしれない。
人生100年時代と言われる今、「キャリアの自立」が叫ばれている。仕事のスキルを磨き、いつでもどこでも働ける力を身につけることはもちろん重要だ。しかし、それと同じくらい、「お金の自立」も不可欠ではないだろうか。
しっかりとした生活基盤を築くために、正しい知識を身につけて投資と向き合う。それは、これからの時代を生き抜くわたしたちにとって、必須のスキルなのだと思う。もし、あなたの会社に企業型DC制度があるなら、毎年開催される無料のセミナーを一度覗いてみてほしい。きっと、新しい発見があるはずだ。