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気持ちのマネジメント(第17回)

「会社に行くのが辛い」と部下が打ち明けてきたら

部下からそう打ち明けられたら、どうするだろうか。一瞬、頭が真っ白になるかもしれない。抱えている仕事の納期、チームの状況、人員の再配置……。ビジネスパーソンとして染み付いたリスク管理の思考が、最悪の事態を想定してフル回転を始める。

 

しかし、一呼吸置いて考えてみてほしい。部下がその「辛い」という一言を、勇気を振り絞って上司であるあなたに伝えてくれた。これは、まだ部下との間に「関係性」が残っている証拠なのだ。

 

完全に心が離れてしまっていたら、相談もなく、ある日突然、退職届を出すという選択だってあり得たはずだ。だからこそ、これは絶好のチャンス。彼ら彼女らとの関係を再構築し、より良いチームを作るための重要な一歩と捉えるべきなのだ。

 

間違っても、「甘えている」「怠けている」などと決めつけてはいけない。たとえ週末にSNSで楽しそうな投稿を見かけたとしても、だ。仕事の辛さとプライベートの充実は、必ずしも矛盾しない。人には人の価値観がある。自分の物差しだけで相手を測っていては、いつまで経っても本質的な理解には至らないだろう。

 

 

部下が「辛い」と口にした時、上司がすべきことはただ一つ。すべての思考を一旦クリアにして、真正面から部下の話を聞くことだ。それも「すぐに」「じっくりと」時間をかけて。

 

ここで陥りがちな罠がある。我々ビジネスパーソンは、常に課題解決を求められる環境にいる。だから、相談を受けると、つい癖で「どうすれば解決できるか?」という思考回路で話を聞いてしまう。しかし、部下が今求めているのは、具体的な解決策ではないケースがほとんどだ。

 

彼ら彼女らが本当に求めているのは、「自分の辛い気持ちに寄り添ってほしい」「この状況を分かってほしい」という共感なのだ。もし具体的な課題解決を望んでいるなら、「〇〇に困っています」とはっきり言うはずだ。「辛い」という感情的な言葉を選んだ時点で、その本質は別のところにあると考えるべきだろう。

 

だから、まずは徹底的に聞き役に回る。遮らず、否定せず、ただひたすらに耳を傾ける。「そうか、辛かったんだな」と、その気持ちを受け止める。そして何より、「自分はあなたの味方だ」という姿勢を明確に伝えることが、部下の不安を和らげる第一歩になる。

 

慌ただしい日常の中、部下と向き合う時間を確保するのは簡単ではないかもしれない。他のメンバーへの影響を考え、早急に解決策を見出そうと焦る気持ちも痛いほど分かる。

 

だが、焦りは禁物だ。上司が慌てて提示した解決策は、部下の本心とズレていることが多い。まずは、彼ら彼女らが何に、どのように心を痛めているのか、その背景にある感情をていねいに解きほぐしていく必要がある。

 

「辛い」という言葉の裏には、人間関係の悩み、業務内容への不満、将来への不安など、様々な要因が複雑に絡み合っている。それを解き明かすには、信頼関係を土台とした傾聴が不可欠だ。

 

部下が勇気を出してくれたその日を、関係性の終わりの始まりではなく、新たな始まりの日にする。そのために、まずは上司であるあなたが、課題解決モードのスイッチを一旦オフにして、一人の人間として彼らの心に寄り添う勇気を持つこと。それが、今の時代に求められるマネジメントの形なのかもしれない。部下からのSOSは、わたしたち自身が成長するための機会でもあるのだ。